個人を尊重する社風づくりで電力業界の競争を勝ち抜く
ニューズウィーク日本版 / 2016年4月8日 18時14分
最新テクノロジーを導入しつつ、少しだけ不便さを残しておく
端的に言えば「どこで働いてもいい」オフィスであり、従業員の様子を見る限りではその自由を十分に満喫しているようだ。とはいえ、最初からそうだったとは限らない。
現在も、職種ごとに従業員が固まる傾向があるという。慣れたエリアやデスクに座りたくなるのは人間として自然な心情だ。かつて固定席を廃止する際は「どうやって人を探せばいいかわからない」「専用のツールやアプリを作ってほしい」といった意見も寄せられた。しかし、会社からの回答は明快な「ノー」だった。
(左上)社屋外観。写真左手に見える塔が突き出た建屋に大きなアトリウムがある。(左下)2階執務スペースの奥に設けられた、個室のコンセントレーションブース。(右)アトリウムのある建屋と増築したフロアを結ぶ回廊。古い建物の壁をあえてそのまま残したのは、「外部」を意識させることで気持ちを引き締める効果を狙ったもの。
アトリウムに隣接したカフェ。社内には他に無料のコーヒーメーカーがあるにもかかわらず、オープン後は社員から大人気なのだそう。
2階の執務エリア手前のミーティングスペース。従来はギャラリーのように絵を展示していたが、人の流れを考え交流の場に変更した。
「あえて便利なツールを提供しない選択をしたんです。『パブで友達と待ち合わせをするのと同じでしょう?』と。同じ建物内にいるんだから、ちょっと歩いて探すなり、電話をするなりすればいい。過度にテクノロジーに依存するのではなく、クリエイティブに、自分の頭を使って考えてほしいんです」
従業員のワークスタイルを変えるインパクトで言うなら、オフィス空間の変化に劣らず、自宅勤務の推奨も大きい。現在のところ、週3日は出勤・週2日は自宅勤務という形態が平均的だ。自宅勤務の効用は第一に生産性の向上。自宅勤務の推奨によりオフィススペースを削減、オペレーションコストを大幅に抑えられた。
【参考記事】シェアリングエコノミーで人をつなぐ、オランダ発のコワーキング
個人の自由度を組織の生産性につなげる取り組み
チェンジマネジメント実施前の2009年、エッセントは自宅勤務について調査を行った。22職種のチームに1年間自宅で仕事をしてもらったところ、生産性は15%向上。自宅にいれば体調が悪くても仕事を多少は進められるのだろう、病欠も20%減。総じて「仕事と生活のバランスが向上した」というポジティブな意見が目立つ結果となった。
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