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個人を尊重する社風づくりで電力業界の競争を勝ち抜く

ニューズウィーク日本版 / 2016年4月8日 18時14分

「要するに、時間を自由に使うことができるのが自宅勤務の一番のメリットでしょう。例えば以前は、クルマを修理するにもわざわざ半日休みをとっていたのが、今は気楽なもの。生産性向上は私自身も実感しています。家で1日、2日仕事をするとオフィスでの1週間分の仕事ができる。すごく効率がいいんです」

 もう1つ、優秀な人材が集まり始めたことも、自宅勤務推奨による成果に上げられる。もとよりオランダでは自由度、マネジャー、給与が勤務先を決める大きな理由と言われている。エッセントはその自由度で傑出した存在だと言える。結果、エッセントで働きたいと希望するワーカーが増えたということだろう。

 だが、個人の自由度が増え、個人の生産性を向上させることが、組織の生産性に直結すると言い切れるのか。例えば、自宅勤務が増え、同僚と接する機会が減れば、孤独が募ることもある。また、チームスピリットが薄れていく弊害はないのか。

「確かにチームと話し合いをしなければ仕事は進まない。ですから、オフィスへ行く必要は常にあるんです。自宅勤務が始まった当初は、週に2日はチームとミーティング、2日は自宅勤務で、あと1日はとにかく出社と決めていました。ただ、仕事の話ばかりでもよくない。そう思って、オフィス隣のパブに行って、仕事以外の話をするようアレンジしたところ、自然に会話が増え、チームスピリットも育っていきました」

フロアの通路上に設けられたカフェスペース。窓の向こうには中庭に植えられた竹が見えており、オフィス全体としても竹の意匠が至るところに取り入れられている。

2階の執務エリアにあるカジュアルなミーティングができるソファスペース。エッセントでは、社員がいつどこで働いてもいいように、オフィス内の様々なところに社員が自由に使えるスペースを用意。固定席をなくしたことで、これらのオープンスペースが有効活用されている。

週1日しか会社に来ない人がいてもかまわない

 言われてみれば、オフィス内にも、チームスピリットを醸成、キープするための仕掛けが散見される。コーポレートカラーであるピンクを多用しているのは「エッセントにいる」ことを常に意識してもらうため。無料のコーヒーメーカーを複数置き、その場のちょっとした立ち話を促してもいる。

 もっとも従業員がより好むのは、不思議と有料のカフェのほうだとか。「コーヒーが美味しいからではなさそう」とブロウメルス氏は見る。同僚と話をしながら入れたての本格コーヒーを買うという行為のためにわざわざ有料カフェに集まるのではないかと。それこそ自宅勤務では味わえない体験だ。

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