いとうせいこう、『国境なき医師団』を見に行く4 (READY OR NOT,HERE I COME)
ニューズウィーク日本版 / 2016年6月14日 11時30分
つまり、MSFに参加したいと思えば、医療従事者でなくてもいい。というより、そうした人々と一体になって、団は形成されている。
その適切な例を今すぐにも書きたいのだけれど、リシャーが控えめな態度で両手を体の前に置いて日だまりの中からこちらを見ている。みんなで四駆へ乗って、今度は町のかなり荒くれた地区にあるマルティッサン救急・容態安定化センターを見学しなければならない。
もちろんそこにも『仁術団』は常駐しており、やっぱり頭の下がる日々を生きていた。
次回はその、かなり危険なゾーンでの医療についてレポートする。
ひょっとしたらそのまま「適切な例」を書いてしまうかもしれない。
俺が思わず涙をこぼしてしまった夜の話を。
続く
追記
(↓谷口さんが撮った写真もたまには「追記」に。ナプ・ケンベセンターの緊急治療室前で。左から紘子さん、ダーン、ジャックさん、俺)
いとうせいこう(作家・クリエーター)
1961年、東京都生まれ。編集者を経て、作家、クリエーターとして、活字・映像・音楽・舞台など、多方面で活躍。著書に『ノーライフキング』『見仏記』(みうらじゅんと共著)『ボタニカル・ライフ』(第15回講談社エッセイ賞受賞)など。『想像ラジオ』『鼻に挟み撃ち』で芥川賞候補に(前者は第35回野間文芸新人賞受賞)。最新刊に長編『我々の恋愛』。テレビでは「ビットワールド」(Eテレ)「オトナの!」(TBS)などにレギュラー出演中。「したまちコメディ映画祭in台東」では総合プロデューサーを務め、浅草、上野を拠点に今年で9回目を迎える。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
いとうせいこう
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