いとうせいこう、ハイチの『国境なき医師団』で非医療スタッフの重要さを知る(7)
ニューズウィーク日本版 / 2016年7月14日 16時45分
そして看護師のリーダーであるベルギー人ステファニーにも会った。
彼女はほんの一週間ほど前、帰還していたベルギー空港で爆弾テロに遭い、多くのニュース映像に出た人だった。携帯電話を耳にあて、右手を血で真っ赤にしながら何かしゃべっている写真だ。当時世界中の人が見たし、今も検索するとすぐにわかる。
それが数日後にはもうハイチに戻って仕事を始めていたのだった。なんと勇敢な女性だろうか。
となると、写真の意味もまるで変わってくる。
悲嘆に暮れて家族に電話している女性、といういわゆるマスコミ向きの一枚ではない。
おそらくあれは、状況を医療関係者に伝え、適切な処置を要請していた姿に違いないのだ。
そうでなければ、怪我が治るのもそこそこにMSFに復帰するはずがないのだから。
参照記事:【写真リポート】ブリュッセルで連続自爆テロ
そんな猛者たちが黙々と妊産婦たち、新生児たちを守る産科救急センターの内部については次回さらにくわしくレポートする。
続く
<補足>
・菊地紘子さんのカチンコチンになったインタビュー映像ダイジェストを、谷口さんが緊急にまとめてくれた。
その緊張ぶりと真面目さをどうぞご覧下さい。
<紘子さんメッセージ>
・また、第一回で紹介したビデオの日本語版も作られたようだ。
<MSFのTシャツへの思い>
いとうせいこう(作家・クリエーター)
1961年、東京都生まれ。編集者を経て、作家、クリエーターとして、活字・映像・音楽・舞台など、多方面で活躍。著書に『ノーライフキング』『見仏記』(みうらじゅんと共著)『ボタニカル・ライフ』(第15回講談社エッセイ賞受賞)など。『想像ラジオ』『鼻に挟み撃ち』で芥川賞候補に(前者は第35回野間文芸新人賞受賞)。最新刊に長編『我々の恋愛』。テレビでは「ビットワールド」(Eテレ)「オトナの!」(TBS)などにレギュラー出演中。「したまちコメディ映画祭in台東」では総合プロデューサーを務め、浅草、上野を拠点に今年で9回目を迎える。オフィシャル・サイト「55NOTE」
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
いとうせいこう
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