【南シナ海】スカボロー礁での中国の出方が焦点――加茂具樹・慶應義塾大学教授に聞く
ニューズウィーク日本版 / 2016年8月22日 11時34分
「党内政治生活に関する若干の準則」というのは、文化大革命の再演をいかにしたら防ぐことができるのかという問題意識を踏まえて、80年につくった党内の権力構造の在り方や人事の在り方に関する方針を定めたものです。この方針を踏まえて、その後、個人への過度の権力の集中を避けるために国家機関の定年制や任期制を導入しました。
これを10月の中央委員会で「新しい情勢」の変化に沿うように変えるというわけです。一部の議論では、習氏の任期の延長、つまり2期10年で終わらないための布石を打つのではないかと言われています。
――より強いリーダー確立のための制度変革でしょうか。
加茂氏 習氏は、中国の一層の発展と安定のためには強い指導部が重要だと信じています。胡錦濤総書記の時代のような集団指導体制よりも核心となる指導者の下で、強いリーダーシップを発揮できる指導部をつくるための制度を確立させてゆくことを目指すのでしょう。ですから、これに先立って開催されるG20首脳会議を成功させることが必至だということになります。
習政権の対外政策は、これまでことごとく失敗してきたという指摘があります。対日、対韓、対米、対東南アジア、対台湾、内政ですが香港がそうです。そうした失敗によって習氏の政権内部における威信が弱くなっているのでは、と見られています。しかし、この秋の党の会議で、今まで30数年以上続いてきた党内の制度を変えることを議題とすることができたということは、習氏には制度を変える政治的権威があると読むことができます。外交の失敗で党内基盤が弱まっているという説明は成り立たないかもしれません。
習政権は、強い指導者による統治という中国政治の形をつくろうとしています。習氏は、就任直後から「中華民族の偉大な復興」という言葉を、それ以前の指導者と比較してより多く使っています。また、以前の指導者は経済の「発展」という言葉をよく使っていましたが、習氏は「党の建設」という言葉を多用しています。
この言及するキーワードの変化は、この単語を発言する人、つまり習氏の問題関心の所在が投影されているのでしょう。今、自らが推進させてきた改革開放政策によって生まれた多元的な社会に向き合っている中国共産党による統治のコストは上昇し、危機に直面している、という意識がとても強いことを意味しているのだと思います。だから内政は強い指導者を求めています。
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