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【南シナ海】スカボロー礁での中国の出方が焦点――加茂具樹・慶應義塾大学教授に聞く

ニューズウィーク日本版 / 2016年8月22日 11時34分

――米大統領選の2候補について、中国はどう見ているでしょうか。ヒラリー・クリントン前国務長官の場合はアジア回帰主義が強まるのでは。

加茂氏 民主党の政策綱領には日米同盟関係の強化が明記されています。共和党の政策綱領にもアジア太平洋地域に積極的に関与することが示されています。「アメリカ・ファースト」という主張をしてきたドナルド・トランプ氏の発言を捉えて、米国の他国への関心・関与が弱まるのではないかという意味では、中国にとっては有利という受け取りがあるかもしれません。

 とはいえ、中国の安定と繁栄にとって、民主党の米国であっても共和党の米国であっても米国との関係の調整は最重要な課題であることには変わりありません。英国大使等を務め、現在は全国人民代表大会(全人代)外事委員会主任、中国社会科学院国家グローバル戦略シンクタンクにも所属している傅瑩氏の「米国主導の国際秩序は中国をまだ受け入れていない」という発言にあるように、中国国内には国際社会が中国を認めていないことへの不満の声があります。今後、中国は米国にさまざまな要求を提起し、アメリカを中心とする既存の秩序の問題点を指摘し、その改善の必要性を主張してゆくことには変わりありません。

――日本の南シナ海への関与はどうあるべきでしょうか。具体的には自衛隊の艦船の派遣、航行の自由作戦への参加ですが。

加茂氏 まず、従来通り、この地域の問題をめぐっては、「『法の支配』に基づき平和的に解決することが重要である」ことを繰り返し主張すべきだと思います。中国は、米軍が現在展開している「航行の自由作戦」へ日本の海上自衛隊の艦船が参加することは、日中関係に影響を与える極めて重要な問題であり、かつ中国はそれを望まないというメッセージを一貫して発しています。

 中国からすれば、こうした行動が日本による現状の変更の動きだと映るわけです。12年9月に日本政府が尖閣諸島の三つの島の所有権を取得したことを中国は「日本による現状の一方的な変更」と捉え、これを口実に尖閣諸島海域での圧力を一層強めています。南シナ海への日本の関与は、中国による日本に対する一層の圧力を呼ぶことになるでしょう。

――フィリピンのコーストガード(沿岸警備隊)支援は既に行っています。

加茂氏 よく考えなければいけないのは、日本が南シナ海への関与を深めることによって、この海域に関係するアクター間のパワーバランスに影響を与える可能性があるということです。中国の台頭によって揺れているこの地域のパワーバランスを保つために、日本はキャパシティービルディングのための支援をすれば良い、という単純な問題ではないということです。

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