【南シナ海】スカボロー礁での中国の出方が焦点――加茂具樹・慶應義塾大学教授に聞く
ニューズウィーク日本版 / 2016年8月22日 11時34分
そして外交は、自分たちの生存空間を確保するために何をするべきかを考え、そうした意識が積極的で強硬な外交政策を必要としています。既存の国際秩序の問題点を改善する好機にあるという意識も、そうした政策を後押ししています。このように内政と外政がリンクしているのです。
――実現すれば皇帝のようになるということですか。
加茂氏 海外の中国研究者の中には「習近平のプーチン化」という指摘があります。「2期10年」という慣例を破って任期の延長が現実になる可能性のことです。どんな組織でもトップの任期は重要です。任期の終わりが見えないということは、その配下にある人たちは、いつまでもそのトップの意向を忖度(そんたく)せざるを得なくなる。権威の強大化です。対外政策にも指導者の国際感覚が大きく反映されるでしょう。
敗北感無い? 中国外交
――先ほど指摘された外交上の失敗は、習氏個人の外交感覚の欠如に起因するのでしょうか。
加茂氏 今の意思決定の形から想像すれば、強く影響しているように思えますが、中国の対外行動が、どの程度、習氏個人の外交感覚を反映したものであるのかはよく分かりません。ただし、中国の外交政策の研究者や外交の実務担当者たちは力のバランスやリアリズムに基づく発想を信じているのではないかと感じます。中国の小国と大国に対する外交の形は違います。
中国の政権指導部自身が、自らの外交を「失敗」と評価しているのかどうか分かりません。仲裁判決の結果は中国に対して厳しいものとなりましたが、東南アジア諸国との関係の構築については、これからのことだと考えているのでしょう。南シナ海における行動は、一つ一つ既成事実の積み重ねです。実効支配を拡大させています。
対日関係は、日本人の視点からすれば、結局のところ日米同盟を強化させてしまいましたから失敗したのではないか、というように思えます。対韓国では高高度防衛ミサイル(THAAD)配備について、配備されることは十分に想定していたはずです。
――今年は日本で日中韓首脳会談が予定されています。
加茂氏 中国政治は権力の継承の時期ですから、中国との対話をたくさん維持し、発展させてゆくことが大切です。日中韓サミットの枠組みは大切です。同時に、今の中国政治の意思決定の構造から言えば、東シナ海な南シナ海をめぐる問題について日中両国間での意思疎通を深めるためには、習主席と安倍首相との会談も必要なのですが、それは難しいのでしょうか。
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