事業担当者は、法務パーソンと共犯関係を結べばいい
ニューズウィーク日本版 / 2016年9月23日 13時51分
言い換えれば、法律の解釈に最大のゆらぎが出る時代ですから、解釈ひとつでいろいろ工夫できるということ。だから僕みたいな法曹界としては異端な人間も出てくるし、事業も例えばAirbnbやUber、あるいはグーグルといった法のグレーゾーンをうまく使いつつ、人々が待ち望むサービスを展開できる企業が生まれてきているんじゃないかと思うんです。そういう時代において、法と現実のはざまのグレーゾーンを一緒に渡ってくれる法務のパートナーがいると、「ここはアウト、でもここまでは大丈夫」といった攻めどころが見えてくるはずなんですね。
とはいえ、大企業ではコンプライアンスという看板のもとに、攻めの姿勢を自ら抑制せざるを得ない面がある。それが難しいところですが、しかし単に法令を順守するところからは新しいものは生まれてこないということに、そろそろ日本の企業も気が付くべきです。イノベーションを次々と生み出しているアメリカ西海岸の企業では、コンプライアンスは単に法令の順守を意味しない、デューデリジェンス(適正手続)によって企業は社会的責任を追及されるものととらえられています。そうでなければUberやAirbnb、Squareのようなビジネスモデルが誕生するわけがない。日本企業では法令順守という名の思考停止に陥っている。この流れは変えていかなくてはいけないと強く感じています。
法や制度にがんじがらめになっていては、新しい事業の芽を摘みかねない
オープンソースやオープンイノベーションに興味を持っている大企業の事業担当者から呼ばれて、チーム内で話をしたりすることもあります。そういう場合、最初の1、2回は盛り上がるんですけど、3回目くらいから急に社内の法務部の方が出てきて、警戒のまなざしで迎えられたりする(笑)。気付いたら前回まであんなに楽しそうに構想を話していた事業担当者は小さくなって隅のほうにポツンと座って、発言も控えめになっていらっしゃる。そういうケースを何度となく経験してきました(笑)。
法務部の方の心配もよく分かるんです。下手なことをして知財や企業機密を流出させては大きな損害につながりかねませんから。ただ、法や制度にがんじがらめになっていては、新しい事業の芽を摘みかねないというのも事実だと思います。
社内の反対でオープン化が思うように進まないと悩んでいる方に対しては、まず小さなステップから始めてほしいと言いたいですね。これはオープンイノベーションの鉄則です。いきなり大きなところから手をつけるのは大変ですけど、まずこのデータから、この部品から、試験的にオープン化してみる。それでうまく行けば、製品のハードもソフトもすべてオープン化に踏み切ればいいんです。
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