トランプ、クリントンいずれでも中国に強硬策は取れず――小原凡司・東京財団研究員に聞く
ニューズウィーク日本版 / 2016年10月11日 11時22分
空軍に信頼置いていない習近平
――極超音速滑空体という兵器の開発状況は。
小原氏 中国は既に対艦弾道ミサイル(ASBM)を配備していますが、これをその代わりに使おうということです。より命中精度を高めることを考えていると思います。核弾頭の搭載については、そもそも米国は核弾頭を積まない、大量殺りくを伴わない戦略兵器を考えていたようですが、中国はそこまでは考えていないのではないか。中国が実験の際に発射に使ったロケットを見ると、大陸間弾道弾ではなく、准中距離のものなのでASBMと見ています。米国ですら開発を終えておらず、中国はなかなか思うように進んでいないと思います。
――中国は「空天一体」という軍事思想と言われます。
小原氏 戦闘の空域、あるいは宇宙までネットワークを構築する時、どうしても欠かせません。戦闘機が攻撃する時も衛星を通じて情報のやりとりをします。戦闘機は早期空中警戒機、あるいは空中警戒管制機だけではなく、より多くの情報を衛星から取る。そういうネットワークの構築を含め「空天一体」と言っていると思います。現在、中国は大量に衛星を打ち上げている段階ですが「北斗」という航法援助のための測位衛星の数が足りず、精度が上がっていません。早急に増やして、ネットワーク化を進めるのは間違いありません。
――最近は空軍重視が言われていますが、海軍に偏り過ぎていたため空の反発を抑えるためでしょうか。
小原氏 2012年に空軍司令員の許其亮が中央軍事委員会副主席に抜てきされたのも、そういった理由によるものです。なだめるというより、リーダーシップの強過ぎる人間を不満が高まっている中にとどめるのは危険だとも言われました。その後、空軍への予算配分が多くなったのは間違いありません。
一方、習国家主席の空軍に対する信頼は全幅のものではないだろうと思われます。14年に空軍司令部にだけ突然視察に行きました。一般に党、軍のトップが視察に行くのは、思い通りなっていない、危険だと思うところに行くということです。空軍は押さえ切っていないという認識は持っていたと思います。
国産空母、最初は中東派遣か
――空母について「遼寧」以外に少なくとも2隻の国産空母を建造中と言われます。
小原氏 問題は中国が空母の運用を全く知らず、艦載機の運用経験がほぼ無いことです。大連造船所で建造中の空母は、建造に6年かかると言っています。進水なのか就役なのか不明ですが、「二つの百年」の一つ、中国共産党結党100周年の2021年に時期を合わせるのです。でも、艦載機をそろえ、搭乗員を訓練し、ミッションをどう組み立てるのかというノウハウをロシアはほとんど教えなかったので、試行錯誤しながら自分でやらざるを得ない。まだ実戦能力は無いと思います。
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