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トランプ、クリントンいずれでも中国に強硬策は取れず――小原凡司・東京財団研究員に聞く

ニューズウィーク日本版 / 2016年10月11日 11時22分

 問題は、フィリピンが協議をしたいと言っている中で、中国としては怒らせて米国側に戻っては困るので、時機を見てということだと思います。米国が手を出さないことは中国は見切っていますし、3カ月に一回の航行の自由作戦は、中国に人工島軍事拠点化の言い訳と準備の時間を与えています。

――南シナ海の支配を確立したとして、中国はその後どこへ向かうのでしょうか。

小原氏 西への軍事プレゼンスを高めるでしょう。西進戦略の肝は、国内の格差解消もありますが、米国と太平洋で衝突しないことにあります。西へ向かうと米国との軍事プレゼンスの競争になります。今の段階では米国の方が大きいのですが、南シナ海でコストを強要できれば、西で展開する米軍の能力を少しでも下げることができると考えているでしょう。

 また、南シナ海を自分の海にできれば、戦略原潜が自由に太平洋に出られる。いつでも米国に大陸間弾道弾を打ち込むことができ、米国の核先制攻撃に対する核による報復の最終的な保証になると考えています。また、南シナ海について、中国は行動規範について草案づくりをオファーしましたので、これで東南アジアの諸国はしばらく静かになるでしょう。

――次は東シナ海ということではありませんか。

小原氏 尖閣に対する具体的なアクションは、まだ先だと思います。日本は東南アジアの国に比べ、軍事能力が高いので、尖閣を取るとなったら日本が必ず反撃することは分かっています。空軍上将で中国国防大学の実質トップである劉亜洲氏が昨年書いた論文によると、日本はたとえ中国に負けて尖閣を取られても大したダメージは無い。勝てばプラスだが、米国の仲裁で現状維持となっても今と同じ。これに対し、中国が負けるようなことになれば、国内問題化して共産党の統治がひっくり返るので、これ以上のリスクは無い――。勝つまでやらなければならないが、勝てないかもしれない。そういう恐怖がある限り、中国はなかなか手を出さないと思います。

――中国経済の低迷が指摘される中、軍事についてはどういう優先順位があるのでしょうか。

小原氏 特に陸軍のコンパクト化を進めると思います。人民解放軍は土着化しているので、自分の基地から離れて戦えるように訓練している段階だと思います。海軍が軍事プレゼンスを示していくことが重要であり、航空優勢を取るための空軍力が重要で海空には予算が必要、それ以外の陸上については、人件費を含め、大幅に削減されていくと思います。

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