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トランプ、クリントンいずれでも中国に強硬策は取れず――小原凡司・東京財団研究員に聞く

ニューズウィーク日本版 / 2016年10月11日 11時22分

 就役した後、西の方に展開してみせると思います。大連造船所か江南造船所(上海)か、どちらで造っている空母か分かりませんが、駆逐艦やフリゲート艦にエスコートさせて空母打撃群のように見せながら展開してみせるのでしょう。インド洋から地中海へ抜けていくことも考えているのでは。

 それは、中東に中国のプレゼンスが無いからです。サウジアラビアとイランが断交した時、中国は焦ったと思います。仮にサウジとイランが軍事衝突した場合、結局米ロのゲームになって中国はこの地域からはじかれてしまいます。そうしたら「一帯一路」がひっくり返る。習主席が各国を回って多額の支援を約束しましたが、軍事でなく経済のゲームにとどめたいと考えています。現状に相当の危機感があると思います。

 15年の中国の「国防白書」の中でも、「経済活動には軍事力の保護が必要だ」と言っています。そういう意味で本気で戦争をする気は無くても、空母打撃群を形だけでも見せることが大切なのでしょう。

――中東からのエネルギー供給は海と陸とどちらを重視しているのでしょうか。

小原氏 パキスタンやミャンマーを通じてのパイプラインですが、中国にとって陸の輸送路は代替的なものだと思います。陸はそこを通る国々との良好な関係が必要ですし、それら国内の治安も保たれなければなりません。例えば、ミャンマー国内を通るパイプライン周辺の地域は治安が悪い。

 だから中国にとっても海上輸送路が第一で、海のシルクロードを諦めることはないでしょう。中国はタイにマレー半島の最狭部を通るクラ運河を造れと言っています。タイは嫌がって10年以上そのままになっています。中国はマラッカ海峡が米国に封鎖される事態を考え、別の可能性を探っているわけです。



「南シナ海後」の狙いは?

――ドゥテルテ大統領の反米姿勢が注目されています。南シナ海情勢の見通しは。

小原氏 ドゥテルテ大統領はそもそも米国が嫌いだと言われていて、中国にとってはフィリピンから米国が引いてくれれば非常にありがたいと思っています。

 中国はスカボロー礁の埋め立てをして、軍事拠点化すると思います。そうしないと、南シナ海を面で押さえることができません。米国の対応ですが、手を出さないのではないかと思います。政権末期のオバマ政権が軍事行動を起こすオプションは無いし、クリントン氏でもトランプ氏でも国内問題で手いっぱい、軍事行動は米国民の支持を失うだけで、できないと思います。

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