トランプ氏当選と中国――尖閣問題は?
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月10日 16時35分
トランプ氏が当選した。もし本当に「アメリカが世界の警察をやめる」とすれば、中国にとってこんな嬉しいことはない。貿易面や移民面では中国に不利でも、南シナ海や東シナ海問題では有利だろうと中国は見ている。
習近平国家主席がトランプ氏に祝電
日本と同じ程度に、中国でもアメリカの大統領選に関する関心は高かった。中央テレビ局CCTVや新華網だけでなく、中国の「百度(bai-du)」という検索サイトのトップページに「大事件」というタイトルで、トランプ氏の写真が63枚も出ている(香港メディアだが中国政府系で、中国ではCCTVと並んで堂々と公開されているウェブサイトだ)。このことからも関心の高さがうかがわれるだろう。
11月9日、トランプ氏の当選が決まると、習近平国家主席もトランプ氏に祝電を送ったと、CTVや新華網が伝えた。その内容は、ちょっと長いが、今後の中米関係を見る上で多少の参考にはなるだろうと思われるので、ご紹介する。
――最も大きな発展途上国と最も大きな先進国として、そして世界の二大経済大国として、中米両国は世界の平和を維持し、全世界の発展と繁栄を担う特殊で重要な責任を負っており、広範囲の共通の利益を有している。健全で安定した中米関係を長期的に反転させることは、両国人民の根本的な利益に合致しており、国際社会の普遍的な期待でもある。私は非常に強く中米関係を重視しており、「衝突せず対抗しない状態を保ち、相互に尊重し合い、ウィン・ウィンの原則に協力し合い、(省略)両国の意見の不一致を建設的に解決し、中米関係が新しいスタートにおいてさらに進展し、両国人民と各国人民に幸せをもたらすこと」などを、あなたと一緒に努力していきたいと期待している。
やはり「新型(二大)大国関係」の思想が基本にある。
そして長すぎる美辞麗句の中に、それとなく習近平氏の(中国を高く位置づけた、やや自信過剰な)喜びがにじみでているように感ぜられる。
11月7日付の本コラム「中国は米大統領選と中国に与える影響をどう見ているのか?」でも書いたように、短期的には(数年内くらいなら)、中国にとってはトランプ氏が当選した方が有利なのである。
もちろん経済貿易関係では多少の痛手を受けるだろうし、金融リスクも抱えることになるだろう。また、中共の「使命」を帯びた「移民」をアメリカに送り込み、アメリカの人口構成まで変えてしまおうとする「戦略」は制限を受けることになる可能性もはらんでいる。
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