トランプ氏当選と中国――尖閣問題は?
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月10日 16時35分
記者:もし中国が、日本人が言うところの尖閣列島、すなわち釣魚島を占領したとすれば、アメリカはどう出ますか?
トランプ:私がどうするかということに関して、あなたに言いたくはない。
このような、執拗とも言えるほど食い下がった質問が、トランプ氏に向けられていたことを中国共産党系列の新聞が報道していることもあわせて考えると、「トランプが当選すれば、南シナ海や東シナ海問題などへの介入を減らすだろう」というのが、中国の大方の見解だと言っていいだろう。
環球時報はさらに、11月13日から18日にかけて、中国の昆明で、中米両陸軍の共同軍事演習(人道主義的災害救助合同演習)が行われることを特記し、あたかも「中米両軍は仲がいいのだ」というのをアピールしている。
東南アジア諸国を着々と落としていった中国
ただ、そううまくはいかないだろうことも、中国は予測している。それに備えて、中国が今年、力を入れてきたのは東南アジア諸国を、つぎつぎと手なずけていくことだった。
これに関しては、すでに本コラムで以下のような状況をご紹介してきたので、重複は避ける。
●「チャイナマネーが「国際秩序」を買う――ASEAN外相会議一致困難」(ラオスとカンボジアに関して)
●「中国を選んだフィリピンのドゥテルテ大統領――訪中決定」
●「中比首脳会談――フィリピン、漁夫の利か?」
●「スー・チー氏の全方位外交と中国の戦略」
これから明らかなように、「ラオス、カンボジア、フィリピン、ミャンマー」は、すでに手なずけたと言っていいだろう。さらにまだマレーシアのことをご紹介していない。
実は「11月3日、マレーシアのナジブ首相は習近平国家主席と北京の釣魚台国賓館で会見していた」のである。それも、南シナ海の領有権問題や防衛関連での協力において両国関係をさらに強化させることで合意し、中国が推し進める「一帯一路」構想を称賛して、中国から多額の支援を取り付けたのだ。
南シナ海に関しては、7月に出されたオランダ・ハーグの仲裁裁判所の判決など、どこ吹く風。中国は完全に判決を無視し、「実」を取って、「問題があれば関係する両国間でのみ話し合いを通して解決する」という言質を、チャイナ・マネーの交換条件として取り付けている。
中国にとってすでに、南シナ海問題は「安泰」なのである。インドネシアなど、どこかの根性のある一国が抗議を申し出てきても、アメリカの強力な軍事的介入でもない限り怖くない。
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