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トランプ氏当選と中国――尖閣問題は?

ニューズウィーク日本版 / 2016年11月10日 16時35分

 しかし、軍事外交的な中国包囲網という観点からすると、中国は「しめた!」と思っている側面を否めない。

 今回は特に、南シナ海問題と尖閣諸島問題に焦点を当てて、分析を試みる。

南シナ海や東シナ海問題に関して

 もちろん中国政府の正式な見解としては表明していないが、しかし、たとえば中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」など多くの中国メディアは、学者の見解という形を取って、トランプ政権になれば、オバマ政権の時のような軍事外交的な対中包囲網形成の度合いが下がるだろう踏んでいる。

 その理由にはいくつかある。

 まず、トランプ氏が選挙演説中に「アメリカは世界の警察をやめる」と言っているからだ。これは「他国への余計な介入をやめる」という意味になる。

 また、「日本や韓国などに配備している米軍を見直す(他国に駐在しているアメリカ軍を引き揚げるか、あるいは、もし防衛してほしければ、もっと駐留のための経費を当該国が負担しろ)」といった趣旨のことも言っている。これはすなわち、オバマ政権のアジア回帰、リバランスを見直すということにつながる。

 トランプ氏は「アメリカ・ファースト(アメリカ第一主義)」という言葉に見られるように、他国への介入のためにアメリカ国民の膨大な税金を注ぐべきではなく、アメリカの国民を裕福にさせることが最優先で、最大の課題だ。

 さらに、トランプ氏はTPPから脱退するとさえ明言しているので、ましていわんや、釣魚島(尖閣諸島)や南シナ海問題などに関して中国と必死で戦おうなどとするはずがない、と中国側メディアは分析している。



 中には、南シナ海問題や尖閣問題に関して、トランプ氏に行なった取材を例にとっている報道もある。

 たとえば、11月9日の「環球時報」は、今年3月21日に「ワシントンポスト」がトランプ氏を取材した際に以下のような質問をしたとして、その回答を特別に大きく扱っている。

記者:あなたは中国と南シナ海の問題に関して、どう見ていますか?中国は何をしようとしていると思いますか?われわれ(アメリカ)は、どのように行動すればいいと思いますか?たとえば、貿易面において(中国に)圧力を加えれば、彼らは南シナ海から撤退すると思いますか?

トランプ:アメリカが中国の行動のために第三次世界大戦を始めるとは私は思わない。私は中国のことは非常に分かっている。中国とは、かなりうまい商売をやったことがある。アメリカは中国に対して非常に大きな貿易面での影響力を持っている。だからその面で中国に圧力を掛ければ、中国から譲歩を引き出すことができる。

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