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金正恩の「聖地登山」はインスタ映え狙って演出か 超能力伝説でイメージ作りも

ニューズウィーク日本版 / 2017年12月15日 17時20分

労働新聞には白頭山の山頂で笑顔を見せる金正恩の写真が幾つも掲載された。なるほど素晴らしい快晴である。1枚の写真には乗ってきたとみられる四輪駆動車が写っているので、徒歩で登山したわけではない。むしろ好天の日を狙って登ったのではないか。いわば「インスタ映え」である。事実、この映像は朝鮮中央テレビなどで繰り返し流されている。これまでの公式報道では、金正恩の白頭山登頂は次の通りである。

・14年10月(15年1月9日の労働新聞の論説「革命の聖山・白頭山に登られて」で判明)
・15年4月18日(北朝鮮メディアが4月19日に報道)
・16年11月24日(今年3月27日の労働新聞の紀行記事により判明)

少なくとも年に1回は登っていることになる。中でも15年の登頂は「金正恩=白頭山」のイメージづくりに大きな役割を果たした。強風に髪を乱しながら、白頭山の山頂にじっとたたずむ金正恩─。労働新聞に大きな写真が掲載されたのはむろん、この登頂にちなんだ歌「行こう、白頭山へ」もすぐさま新聞に発表された。

春にも行こう 冬にも行こう
白頭山 白頭山 わが心のふるさとへ
嵐にも折れない 意志を授けて
信念を鍛えてくれる 革命の戦場
行こう 行こう 白頭山へ行こう
行こう 行こう 白頭山へ行こう

軽快なリズムで人民を革命の聖地へと誘う歌で、今も盛んに歌われている。金日成にとって白頭山は抗日パルチザン闘争の地であったし、金正日は白頭山の密営で生まれたことになっている。そうだとしても金王朝3代目、若き金正恩は白頭山にどれほどの縁があるのか? 筆者には白頭山伝説は賞味期限切れだと思われるが、やはり白頭山に代わる革命のシンボル、つまり権力継承を認めさせる正統性のシンボルはないのかもしれない。

今回の白頭山報道の中で筆者は「天が生んだ希代の名将」と訳したが、原文は「天出名将」である。金正恩の最高指導者の地位は選挙で選ばれたわけでも、親から譲られたわけでもない。「天が生んだ」というのである。その天のイメージが白頭山であり、天であるからこそ、報道にあった「湖心」なる摩訶(まか)不思議な言葉にも納得がいく。いずれにしろ金正恩は白頭山伝説から脱皮し、現代的な感覚を発揮するかとの期待は外れた。ICBMと白頭山、最先端科学と伝統が共鳴しつつ、金正恩の権威を高めていこうとしているのだ。



祖父譲りの超能力を保持?

そう慨嘆していたら、平壌から意味深長な本が届いた。革命伝説シリーズ「海に浮かぶ金のじゅうたん」(文学芸術出版社)。60編を超える新たな? 白頭山伝説を収録している。

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