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金正恩の「聖地登山」はインスタ映え狙って演出か 超能力伝説でイメージ作りも

ニューズウィーク日本版 / 2017年12月15日 17時20分

そこに「天出偉人接見記」なるひときわ興味深い伝説が収録されていた。以下のようなストーリーである。

1940年代初めのこと、関東軍の討伐隊司令官・古川という人物が抗日パルチザンのリーダー、金日成に白頭山中で会う。抗日パルチザンの司令部には世界各国の有名な記者がたくさん集まっていた。金日成は古川の正体を知っていたが、わざと知らないふりをしながら言う。「よく来られました。あなたも記者の話を聞くと有益かもしれません」

西欧の記者が金日成に質問する。「小規模で散発的な遊撃戦で日本軍に打ち勝つことなどできないのではありませんか」。金日成は答える。「歌を歌うにも踊りを踊るにも、自分のリズムに合わせなければ駄目でしょう。われわれは今、近づく祖国解放の大事変を迎えるため、準備をしています」。記者たちは驚き、尋ねる。「日本は中国の領土の大部分を占領し、東南アジアの10余りの国も奪い、自国の10倍を越える膨大な領土を占領しています。今、日本は最全盛期を迎えている。朝鮮の独立など見当もつきません」

対して金日成は違う見解を述べる。「日本は最全盛期ではなく、最も深刻な凋落期にあり、敗北直前に至っている。その兆しが至るところに表れている。多くの国を占領したということは日本に反対する国も多いということです。戦線が広がれば、防護密度は急激に弱くなっている。私は確信しています。せいぜい2~3年内に滅ぶでしょう」。これを聞いた記者たちは「天出偉人万歳!」「希世の予言王に栄光を!」と叫び、古川も一緒に拍手をしたらしい。そして金日成は今日の話を討伐司令部に帰り、上官に一刻も早く伝えるよう言うのである。金日成は「縮地法」なる妖術を使い、司令部のある中国・延吉をすぐ側にまで引き寄せてしまったという。

荒唐無稽と言えばそれまでだが、ここには北朝鮮指導部の潜在意識がにじんでいる。超能力を持つ祖父・金日成の力にあやかり、対米決戦で勝利したい、その思いである。この伝説を読んだ人民に、ひょっとして金正恩も祖父譲りの超能力を持ち、米国を蹴散らしてくれるのではないか、との期待を抱かせようとしているのだろう。実際、金正恩の白頭山登頂を伝える労働新聞の記事にはこうある。

<そのお方の眼光には、白頭山の荘厳な気性のために狂乱する地球の風に揺らぐことなく、青々とした気迫で勇敢無双に前進する社会主義強大国の姿をもたらす天が生んだ偉人の崇高な光が熱く流れていた>

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