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アメリカとトルコが危険地帯シリアで激突寸前

ニューズウィーク日本版 / 2018年3月28日 16時10分

<米軍が支援するクルド人を攻撃したエルドアン――それでも両国が引くに引けない複雑な事情>

世界有数の危険地帯シリアで、アメリカとトルコが激突寸前となっている。1月20日にトルコがシリアに越境し、米軍が支援するシリアのクルド民兵組織YPG(人民防衛隊)に攻撃を仕掛けたからだ。

中東安定化のためには米・トルコ両国の協力が必要だ。アメリカとたもとを分かてばトルコのエルドアン政権は独裁化を強め、NATOで結ばれたトルコと欧米との同盟は終わるだろう。

両国はシリアで利害衝突に直面している。アメリカがYPGを支持するのは正しい。米軍はテロ組織ISIS(自称イスラム国)を拠点の北部ラッカから掃討するのにYPGに頼り切りだったからだ。同時に、トルコがアメリカのYPG支援に不安を抱くのも正当だ。YPGはトルコからの分離独立を唱えテロを長年行ってきた反政府組織PKK(クルド労働者党)とつながっているからだ。

ロシアとイランに対抗

ISIS掃討がほぼ終わっても両国関係の悪化は止まらない。アメリカは内戦後のシリアで権益を確保する手段として、YPGとの関係を強めている。それをアメリカの裏切りと感じたトルコは、YPGの拠点であるシリア北部のアフリンを攻撃。次にはアフリンの東約100キロ、YPGと米軍部隊の一大拠点マンビジに向かうと脅している。

両国は直ちにきびすを返すべきだ。アメリカはシリアで伸張するイランとロシアに対抗するため、YPGから手を引きたがらない。しかし、イランとロシアの地域覇権を阻止できる力を持つのは、クルド人ではなくトルコだ。

アメリカがYPGからすぐに手を引けない事情もある。YPGは同盟軍としてラッカ奪還で重い犠牲を払った。だがISISが逃亡した今、アメリカがすべきことはYPGに渡した重火器を回収し、クルド人部隊を撤収してアラブ系住民に権限を戻すよう促すことだろう。またYPGに対し、アメリカがシリアでのクルド人自治を支援するのはPKKと絶縁する場合に限ると明言すべきだ。



その見返りとしてトルコはアフリン攻撃から手を引き、PKKと距離を置くシリアのクルド人と実利的な関係に着手する必要がある。エルドアンは国内での強い指導力をてこに、PKKを含む幅広いクルド人社会と和解を目指すべきだ。トルコには1500万人近く、イラク北部とシリアにも数百万のクルド人がおり、軍事的に対立する戦略は行き詰まる。

19年の大統領選をにらみ強国路線を掲げている現在、エルドアンにPKKとの交渉に合意する先見の明はないようだ。だがYPGと対話を始めれば、エルドアンは大言壮語に釣り合う外交手腕を証明し、シリアの混乱から手を引くこともできる。

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