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ジェット旅客機の死亡事故ゼロ:空の旅を安全にしたリスク管理と「ダサい」デザイン

ニューズウィーク日本版 / 2018年4月18日 19時30分

小さな失敗や危機一髪の事態から学ぶ

1976年、米連邦航空局(FAA)は、航空業界全体で匿名の「不安全情報」を収集する制度を構築した。この航空安全報告制度(ASRS)はNASAの独立機関が運営し、毎月何千もの報告を収集している。ASRSに報告を出すことは、パイロットにとってミスの免責が受けられるだけでなく、誇らしい行為でもある。報告をすることによって空の旅がより安全になることを学んでいるからだ。



報告された情報は誰でも検索可能なデータベースに保存される。そしてNASAは毎月のニュースレター「コールバック」で、安全情報への注意を喚起している。

たとえば、あるレターには、着陸態勢に入る寸前に滑走路の変更を指示されたケースが掲載された。指示に従うためには強引に高度を変えなければならず危険だったため、パイロットはこの一件を報告した。この結果FAAは、滑走路への進入指示の手順を改変した。

ここにも教訓がある。小さな過失やニアミスは、事故の可能性についてのデータの宝庫だ。ミスは隠蔽されてはならない。過失や過失を犯しそうになった話は隠し立てせず共有することで初めて、粗さがしの対象ではなく教材になる。

このような報告と共有の仕組みを持つことは、社会学者チャールズ・ペローの言う「経験的知識に基づく警報」となりうる。システムの設計者にとっては、直観ではわからない欠陥を発見するためのデータベースとなりうる。

不格好でも安全なデザイン

航空技術におけるデザインもまた、きわめて賢明なアプローチを取っている。航空エンジニアは、滑らかで美しいデザインが常に良いとは限らないことに気づいている。実際、あか抜けないデザインのほうが安全度は高くなるのだ。

ボーイング737のコックピットを想像してみよう。操縦士の前には大きな操縦桿がある。「誰かが操縦桿を動かすとすべてが動く」と、機長で事故調査官のベン・バーマンは言う。「私が操縦桿を強く引くと、副操縦士の操縦桿も手前に動き、膝にぶつかったり、腹にあたったりする」

一見すると、この操縦桿は大きすぎ、不格好にみえる。だがこれは、機に何が起きているかがはっきりわかる素晴らしいデザインだ。これなら誰が何をしているか、わからなくなることはない。隣の操縦士がパニックに陥り、操縦桿を押すべきところを引いてしまった場合、他の操縦士は決してそのミスを見逃さない。事実は文字通り自分の目の前にあるのだから。

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