中国が「一帯一路」で目指すパクスシニカの世界秩序
ニューズウィーク日本版 / 2018年7月17日 15時30分
1)「一帯一路」とは?
「一帯一路」とは、2013年に中国の国家主席である習近平氏が提起した「シルクロード経済ベルト」と「二一世紀海上シルクロード」の二つの構想の総称です。「シルクロード経済ベルト」構想は、2013年9月7日に、習近平氏がカザフスタンのナザルバエフ大学における講演した際に打ち出した地域協力構想です。「21世紀海上シルクロード」構想は、2013年10月3日に、習近平氏がインドネシア国会における演説で「中国とASEANの運命共同体」構築やアジアインフラ投資銀行(AIIB)設立を打ち出した戦略です。その後、同構想は東南アジアのみならず、南アジア、中東、アフリカ、ヨーロッパ、北極、南極、中南米にまで提唱されています。もはや、「一帯一路」には、明確な地図がなく、シルクロードの地域を越えて、グローバルに展開されています。
習近平氏は、「国と国との運命共同体」から「地域の運命共同体」、さらには「人類の運命共同体」まで、国境を越えて利益が重なる多くの分野において、「朋友圏(おともだち圏)」を拡大し、中国国内と沿線国の発展を結合し、「中国の夢」と沿線各国人民の夢とを結合することが「一帯一路」の意味するところであると繰り返してきました。つまり、「一帯一路」とは、「公正で合理的な国際秩序と国際体系」への発展を推進し、「人類の運命共同体」の建設を推進すること、すなわち、パクスシニカを追求する構想なのです(図1参照)。
2017年11月30日から12月3日にかけて、120数ヵ国の300以上の政党から約600人の幹部たちが北京に集まった「中共と世界政党ハイレベル対話会」が開催されました。その開会の辞で、習近平氏は次のように語りました。「人類の運命共同体を構築するために、『習近平による中国の特色ある社会主義思想』を実現し、ともに『一帯一路』の建設に携わるために、中国の貢献と各国政党間の連携を強化していきたい。異なる社会制度や意識形態あるいは伝統文化を乗り越え、開放と包容的な態度で各国間の交流協力を推進し、自国の利益を追求しながら、他国の利益に配慮してウィン─ウィンを目指そう」。
「一帯一路」が推進しようとしているのは、まず、「5つのコネクティビティ」を構築することです。「5つのコネクティビティ」とは、(1)政策面の意思疎通、(2)インフラの相互連結、(3)貿易の円滑化、(4)資金の融通、(5)国民の相互交流の5つの接続性です。「一帯一路」は、経済回廊の共同建設にともなう「5つのコネクティビティ」の形成により、中共と中国が「中国主導のグローバルガバナンス(=全球治理)」にコミットし、その形勢を中国が主導していこうとしている構想です。中国は、「一帯一路」によって、「利益共同体」と「責任共同体」を形成し、やがては「人類の運命共同体」を構築して、世界の政治経済秩序を「全球治理」の構造へと変えていくことを目指しています(註※「全球治理」は、「グローバルガバナンス」と邦訳されていますが、Commission on Global Governanceが定義するGlobal Governanceと同義ではありません)。
この記事に関連するニュース
-
習氏の外遊 中国の米欧分断に警戒が要る
読売新聞 / 2024年5月12日 5時0分
-
「欧州圏への従属」脱却で発展目指す ハンガリー、中国首脳が会談 関係深化を確認
産経ニュース / 2024年5月10日 11時43分
-
「もしトラ」へ備え?習近平氏「5年ぶり訪欧」の思惑 なぜフランス、セルビア、ハンガリーだったのか
東洋経済オンライン / 2024年5月10日 10時0分
-
習近平主席「セルビアとの相互信頼は岩のように堅固」 ベオグラード到着で談話発表
産経ニュース / 2024年5月8日 9時56分
-
習近平氏が5日から5年ぶりに訪欧、米国の対中圧力に対抗 欧州の足並み乱す狙いも
産経ニュース / 2024年5月4日 19時48分
ランキング
-
1ハリス米副大統領が放送禁止用語 差別に対抗、会場から喝采
共同通信 / 2024年5月14日 17時46分
-
2「ペンをしっかり握って!」遺体に現金を引き出させようとして死体冒涜……親戚の女がブラジルメディアインタビューに「私はモンスターではない」
NEWSポストセブン / 2024年5月14日 19時15分
-
3ガザ支援物資の搬送を妨害 ユダヤ人入植者が急襲
共同通信 / 2024年5月14日 11時52分
-
4中国、国外在住1万2千人に帰国強制 日本からも3人 威嚇や拉致横行 人権団体が報告書
産経ニュース / 2024年5月14日 12時44分
-
5米報道、数日内のラファ侵攻可能=国連の国際職員、攻撃で死亡
時事通信 / 2024年5月14日 14時45分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください