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中国が「一帯一路」で目指すパクスシニカの世界秩序

ニューズウィーク日本版 / 2018年7月17日 15時30分

近年、中国から「16+1」への投資が急増しています。しかし、中国の対欧投資の中軸は英独仏であり、「16+1」への投資は独英仏への投資規模には及びません。中国にとっての「16+1協力メカニズム」は、経済的なねらいよりも地政学的なねらいや政治的なねらいが大きいと言えるでしょう。中国にとって「16+1」には、中国とヨーロッパを結ぶ輸送ルートを新たに構築したいというねらい、「一帯一路」のプラットフォームの一つにしたいというねらい、EUの対中国強硬策を対応させる緩衝材としてのねらいなどがあります。

国務院総理の李克強氏は、2017年11月、ブダペストで開催された第六回中国・中東欧諸国首脳会議で、経済・貿易規模の拡大、陸海空・サイバー空間のコネクティビティの強化、国際定期貨物列車「中欧班列」と直航便航路の増発、金融面の支援の確実化などを提案しました。「16+1」サミットの開催に合わせて、「中国・中東欧銀行共同体」を正式に発足させ、中東欧向けの「中国・中東欧投資協力基金」の第二期を設けました。

中国は中東欧諸国と、「16+1」によるアドリア海、バルト海、黒海沿岸の「三海港区協力」ならびに「中国・中東欧協力リガ交通・物流協力」に合意しています。ハンガリー・セルビア鉄道が完成すれば、ギリシャ最大のピレウス港に通じ、「三海港区」と「一帯一路」が陸路でも連結されることになります。ピレウス港は、アジアからヨーロッパへ向かう航路の玄関口にあたります。

一方、日本にとって、「中欧班列」の発展を見る眼は、ビジネス的な視角だけではありません。中国側の「中欧班列」の経路拡大の目的の一つが、新たな輸送ルートの開拓であることに注目するならば、その背景には、アメリカが南シナ海で海上輸送ルートを封鎖する場合を中国が想定している点を注視すべきでしょう。「南シナ海を米軍が封鎖する事態」が前提にあることについて、日本は考えておかねばならないはずです。

「16+1」は、EUの対中強硬策の「防波堤」の役割も果たしています。近年の中国企業によるEU域内の企業買収をめぐり、イタリア、フランス、ドイツは、欧州委員会に対して、外国企業によるEU域内の企業買収を阻止できる外資規制の強化を訴えました。しかし、中東欧諸国からの反対で同案はEUとしてまとめられずに流されてしまいました。このような動きに、ドイツのガブリエル外相らは、中国が中東欧諸国を使ってEUの足並みを分断するのではないかと懸念の声をあげました。

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