中国が「一帯一路」で目指すパクスシニカの世界秩序
ニューズウィーク日本版 / 2018年7月17日 15時30分
「一帯一路」構想には、「五つのコネクティビティ」を通じて「朋友圏」を形成するねらいがあります。インフラを「中国と同じ規格」で拡充し、複合型インフラネットワークを形成し管理することで、費用と時間のコストを縮小することができるだけでなく、将来的に、デジタル経済、人工知能(AI)、ナノテクノロジー、量子コンピューターなど先端分野での協力を強化し、ビッグデータ、クラウドコンピューティング、スマートシティー建設を推進し、「21世紀のデジタル・シルクロード」を築くことに繋がります。「21世紀のデジタル・シルクロード」構想は、習近平氏が2017年5月の「一帯一路」国際協力サミットフォーラムにおける基調講演で提起しています。しかも、それは、経済領域にとどまるものではありません。国境を跨ぐ光ケーブル網の構築を推進し、国際通信の接続性を高め、大陸間海底ケーブル・プロジェクトの計画を策定し、衛星情報のネットワークを構築することで、安全保障領域において、中国が有利に活用できることを目指しています。
中国は「一帯一路」を新規で創ろうとしているのではありません。中国が提唱する「一帯一路」とは、既存の地域協力のプラットフォームを戦略的にドッキングさせ、優位性の補完を実現しようとする構想です。中国は「一帯一路」を沿線国と、カザフスタンの「光明の道」、ロシアが提案した「ユーラシア経済同盟」(EAEU/EEA)、ASEANの「連結性マスタープラン(MPAC)」、トルコの「中央回廊」、モンゴルの「発展の道」、ベトナムの「両廊一圏(中国南部とベトナムを結ぶ二つの回廊とトンキン湾経済圏)」、イギリスの「イングランド北部の経済振興策(Northern Powerhouse)」、EUの「ユンケル・プラン」、中東欧諸国と中国の「16+1協力」、ポーランドの「琥珀の道」などをはじめ、ミャンマー、ハンガリーなどの政府計画とドッキングしようとしています。
2)中東欧との「16+1」
中国はヨーロッパ諸国に対して、2国間、「中国・欧州連合(EU)」、「中国・中東欧諸国首脳会議(16+1)」、多国間機構などとの多層、重層、複層的な枠組みで、「一帯一路」の枠組みによる協力を進めています。そのなかでも注目されている一つが、2012年に中国が提唱した「16+1」と呼ばれる中国と中東欧16ヵ国の地域協力の動向です。
16カ国は、アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、クロアチア、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、マケドニア、モンテネグロ、ポーランド、ルーマニア、セルビア、スロバキア、スロベニアです(そのうち11カ国がEU加盟国)。「16+1」サミットには、EU、オーストリア、スイス、ギリシャ、ベラルーシ、ヨーロッパ復興開発銀行(EBRD)などがオブザーバーとして参加しています。
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