中国が「一帯一路」で目指すパクスシニカの世界秩序
ニューズウィーク日本版 / 2018年7月17日 15時30分
地政学的要衝に位置するスリランカは、親中派であったラージャパクサ時代からの「借金のカタ」に、中国国有企業へハンバントタ港の運営権を99年間貸し出すことになりました。ハンバントタ港はインド洋圏の中心部にあります。同港湾は、「一帯一路」構想において、ギリシャのピレウス港やケニアのモンバサ港とならぶ戦略的要衝です。スリランカは、2015年に「脱中国依存」の全方位外交を目指したシリセーナ政権へ交代したものの財政を立て直せず、シリセーナ政権も中国の経済力を頼りにせざるをえなくなっています。2017年3月には、中国が独自で開発する衛星測位システム「北斗」の海外進出チームが、タイとスリランカで北斗国際協力の「モデル活動」を打ち出し、北斗による協力をASEANの10カ国とアジア・アフリカ諸国に拡大していくことを発表しました。スリランカが「北斗高精度測位ネットワーク」を運用することで、ロシアや中央アジアや中東の北斗システムと連動させて、南アジア全域が中国の監視下に置かれることになります。
一方、中国にとっての中印関係は、ゼロサムではありません。中国にとって、インドはライバルであると同時に、お互いに巨大な人口のマーケットを抱える「パートナー」でもあります。また、中国にすれば、中国は「グローバルな大国」ですが、インドは「地域大国」にしかすぎず、中国と同等に肩を並べているわけでも「直接的な中国の安全保障への脅威」でもありません。また、南アジアで膨張している中国にとって、「ドクラム+ネパール」の対インド地政学は中国側に有利になっています。The Times of Indiaによれば、2017年12月には、ブータンのドクラム(洞朗)で中国人民解放軍が兵舎などの恒久的な駐屯地を建設し、1600~1800人が駐留し、ヘリポートやプレハブ兵舎や商店を建設し、道路を補修していることが明らかになっています。南アジアでも着実に「膨張している中国」がドクラム高原を支配すれば、ミャンマーとバングラデシュに挟まれたインド東部7州とインド本土を結ぶ陸路を遮断することも中国には可能になります。インド東部7州を「人質」に取られたも同然となったインドは、日米の「インド太平洋戦略」において、日米が期待するほどの動きを中国にしなくなることは明かでしょう。
むすびにかえて
中国がグローバルな経済大国として、その影響力をますます増大していくことに疑いはありません。そのような中国との安定した日中関係の発展は、両国民の大きな利益になります。それは、アジア地域のみならず太平洋地域の平和や発展にも望ましいことです。
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