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中国が「一帯一路」で目指すパクスシニカの世界秩序

ニューズウィーク日本版 / 2018年7月17日 15時30分

4)ロシア・北欧と「氷のシルクロード」

中国の国家発展・改革委員会と国家海洋局は、2017年6月20日、『一帯一路建設における海上協力構想』を公表しました。同構想は、中国~インド洋~アフリカ~地中海、中国~太平洋~南太平洋、中国~北極海~ヨーロッパの3本の「海洋経済ルート」を重点的に建設する必要性を打ち出しました。「海上協力構想」が打ち出した5つの領域における共同建設の協力重点には、海洋産業、港湾の建設・運営、海洋資源開発、海洋関連の金融、北極の開発・利用、「安全保障観」の提唱、海洋公共サービスの共同建設、海洋公共情報共有サービス・プラットフォームの共同構築などが含まれています。また、2018年1月26日には、中国国務院は、自国を「北極圏に最も近い国の1つ」と位置づけ、経済や環境など幅広い分野で北極の利害関係国だと明示し、北極海の開発や利用に関する基本政策と「一帯一路」と結びつける方針を示した『北極政策白書』を公表しました。

「一帯一路」における北極海航路の位置づけと可能性は、中露間の「連携」を深化させています。ウクライナ危機以降の欧米からの制裁で経済的に疲弊しているロシアが、2015年に「一帯一路」と「ユーラシア経済同盟」のコネクティビティを進めると宣言したものの、具体的なプロジェクトはほとんど進みませんでした。中国側のうまみが少ない「ユーラシア経済同盟」との協力やロシア内陸におけるプロジェクトと違って、北極海開発には、経済と安全保障と外交で中国側に大きなメリットをもたらす可能性があります。経済的に低迷するロシアにとって、それは中国から巨額な融資を引き出すチャンスです。

中国の「氷のシルクロード」構想について、ロシア側の懸念が報道されていますが、中露関係はゼロサムでは語れません。中国の北極圏進出へ警戒を強めながらも、ロシアは中国とさまざまな開発プロジェクトも進めています。欧米からの経済制裁が続くロシアにとって、選択肢は限られています。ウクライナ危機以降の欧米の対露外交は、中国にとって有利な国際環境をもたらしています。プーチン露大統領は、2017年3月にロシアのアルハンゲリスクで開催された「国際北極フォーラム」において、北極海航路の主要港とシベリア鉄道を結ぶ鉄道建設などのインフラ整備へ投資するように、中国へ呼びかけました。また、プーチンは、同年5月の「一帯一路」国際フォーラムでも、ロシアが「一帯一路」との協力を望んでいると強調しました。

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