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中国が「一帯一路」で目指すパクスシニカの世界秩序

ニューズウィーク日本版 / 2018年7月17日 15時30分

2018年1月23日、中国外交部は定例記者会見で、「中国側は日本側を含む各国と共に、『共に話し合い、共に建設し、共に分かち合う』という原則に基づき、共同で『一帯一路』建設を推進し、地域の共同発展・繁栄を実現することを望んでいる」と述べました。しかし、中国が「一帯一路」の発展の先に描いている「人類の運命共同体」や「政治体制の多様性を尊重した公正で合理的な国際秩序と国際体系」と呼んでいる世界観は、自由主義や民主主義といった普遍的価値観とは異なる世界秩序に作り替えられる世界観です。

日本が「一帯一路」に組み込まれていくことは、日本の未来にとって望ましいことなのでしょうか。「一帯一路」への参加には、理念への賛同、政策面のドッキング、資金面の支持、プロジェクトへの協力が求められます。中国は、日本の南西諸島方面のみならず、「氷のシルクロード」開拓で今後は津軽海峡や宗谷海峡においても中国プレゼンスを急速に膨張させていくことが容易に予想できます(次頁図2参照)。「一帯一路」の一翼を日本が担っていこうと語ることは、日本の安全保障環境と如何に向き合っていくのかという選択でもあります。また同時に、パクスアメリカーナを支持し続けるのか、それともパクスシニカへの構築へ乗り替えていくのか、という選択でもあります。



「一帯一路」について危惧すべき点は、それだけではありません。「一帯一路」でプロジェクトを進める多くは貧困国であり、中国が補給基地や重要港湾を整備している国は、プロジェクトの資金調達能力と債務返済能力に深刻な課題を抱え、中国への高依存のもとで負債過多に陥っているという点です。人口が少なく採算性が低い国での過剰投資では、中長期的にみても利益が見込めず、「一帯一路」がユーラシアで不良債権を拡大していくことになりかねません。そうなれば、中国が債務国における政治的影響力を高め、それが国際組織のガヴァナンスにおける中国の主導権を強め、中国が主権・領土問題をめぐり「中国に有利な国際世論」を形成できることに繋がります。アメリカの諮問機関である米中経済安保調査委員会が2018年1月25日に開催した「一帯一路」に関する公聴会で、ISRC(International Strategic Research Center)の研究員は、「一帯一路」を請け負う89%が中国企業、7.6%が現地企業、3.4%が外国企業であると証言しました。「超少子高齢化の日本」にとって、「一帯一路」構想への協力は、ビジネスチャンスばかりとは言えません。

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