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コフィ・アナン負の遺産──国連はなぜルワンダ虐殺を止められなかったのか?

ニューズウィーク日本版 / 2018年8月27日 16時0分

RPFの書簡が送られた同日、ダレール司令官は、RPFのカガメ将軍(ルワンダ現大統領、ツチ)から「もし介入部隊をルワンダに派遣したら、我々は戦うからな」と脅かされた。5月にUNAMIRは再創設されたが、RPFはUNAMIRに対して、キガリ空港を含む国内の一部へのアクセスを拒否したため、十分に機能できなかったのである。

なぜRPF、特にカガメ氏はここまでUNAMIRとの協力を拒否していたのだろうか?

それは、RPFは、UNAMIRが戦争に介入し、RPFが獲得すると確信していた勝利の機会が奪われることを恐れていたのである。UNAMIRの存在はRPFの軍事行動の妨げになっていたために、カガメ氏はUNAMIRの撤退を望んでいた。カガメ氏の意図はジェノサイドを止めることではなく──実際に、カガメと同じ民族のツチを保護することに関心がなかったと言われている──、戦争に勝利し政権を奪取することだった。ダレール司令官も自伝に「カガメは(戦争で)勝利するまで、状況を安定化したいという意思はなかったのだろう」と、つづっている。

上記のことから、国連はルワンダに介入する政治的意思がある程度あったものの、RPFがそれを拒否したせいで、PKOの強化が実現できなかったことが理解できたであろう。何しろ、PKOは紛争当事者の同意が得られた場合のみ展開できるのだから。アナン氏はRPFの書簡の存在について知っている立場にいたにもかかわらず、なぜそれについて黙認しているのか不明である。もちろん、他の国連関係者も。国連はルワンダに罪責感を抱いているようだ。

その上、ジェノサイドを予告した上記のファックスは有名な話だが、カメルーン系イタリア人の調査ジャーナリストのオナナ氏によると、それは偽造だという。これもさらに調査を要する。



それから4年後の1998年5月、アナン氏は国連事務総長就任後の「癒しのミッション」でルワンダを訪れた際に、同政府に冷遇された。アナン氏はルワンダ議会で演説したのだが、その前に、ルワンダのガサナ外務大臣が国連を非難する演説をした。1923年に国際連盟がルワンダをベルギーの支配下に置いたことから始まって、国連がいかにルワンダを見捨てたのかという内容だった。

その演説を聞いた多くの議員らは、「国連は悪者」と植え付けられたのだろう。その後、アナン氏は演説で、ルワンダでの国連と国際社会の失敗を全面的に認め、以下のように述べた。「邪悪が支配したときにおいて、世界がルワンダを見捨てたことを、われわれは認めなければならない。国際社会と国連は、邪悪に立ち向かうための政治的意思を参集することができなかった。世界はこの失敗を、深く悔いる必要がある」。その後、議員らからはルワンダにPKOを派遣させなかった同氏の役目を問いただす質問が投げかけられた。

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