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コフィ・アナン負の遺産──国連はなぜルワンダ虐殺を止められなかったのか?

ニューズウィーク日本版 / 2018年8月27日 16時0分

その演説の場に、ルワンダのビジムング大統領とカガメ副大統領は欠席し、ラジオで演説を聞いていた。演説では、アナン氏は「ルワンダの恐怖は内側から発生した」「政府の皆様方だけが暴力抗争に終止符を打つことができる」と述べた。同氏が言及したかった点は、国際社会と国連が十分な行動をとることができなかったのは事実であるが、ルワンダの苦難の原因、特に民族間の和解を促進する必要があることを強調したかったのである。

また、ルワンダ国内ではPKOはジェノサイドを止める力を持っていたのに、黙認していたと間違って認識されていたが、ルワンダに駐留していた国連部隊のみでは、ジェノサイドを止めることができなかった。確かに、UNAMIRはより多くの命を救うために増員されるべきだったが、ルワンダ全国で展開されていたジェノサイドを止めるには、RPFと同じくらいの戦闘能力を擁した部隊が必要だった。

その場にいたセバレンジ議会議長はそれに同意し、そもそもジェノサイドはルワンダ人が同国人を殺害したために、ルワンダ人が自身の内側を見つめる必要があることを痛感していた。しかし、政府の多くの関係者は、アナン氏の発言を被害者を責めているものと捉えた。それが批判の原因となってしまい、演説後に開催された政府主催のレセプションでも、大統領と副大統領はボイコットしたのである。外交上、あってはならない行為である。



実はアナン氏の訪問の2か月前に、クリントン大統領夫妻がルワンダを訪問したのだが、その時はアナン氏と異なり、温かく歓迎された。セバレンジ議長曰く、その背景と理由は下記の通りである。クリントン氏がアメリカ合衆国の大統領として、ルワンダへの軍の派遣に関わっていたら、他国も後に続いた可能性があるため、クリントンの方が責められるべきであった。しかし、クリントン大統領への批判はただアメリカを遠ざけるだけで、何百万ドルもの支援を危うくさせた。

その一方で、ガーナ出身のアナン氏は大国の人間と異なり、ルワンダを支援するにあたって権限がなく、できることは、他国の支援をお願いすることしかなかった。ルワンダ政府として、ジェノサイドへの国際社会の介入を放棄した責任を彼に担がせ、罪を負わせたかったのだった。

さらに追加すると、ルワンダ政府(RPF)はジェノサイドに関わっていたにもかかわらず、その事実を隠し、その責任を転嫁するために国連を都合よく使用(悪用)したとも言える。

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