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中国の「監視社会化」を考える(2)──市民社会とテクノロジー

ニューズウィーク日本版 / 2018年12月21日 18時0分

次に、カメラを使った文字通りの市民に対する「監視」をめぐる状況についても触れておきましょう。近年中国の大都市を訪れた機会がある人なら、駅などの公共施設及び信号機周辺、さらに商業施設の出入り口などいたるところに多数の監視カメラが無造作に設置され、通行する人々に向けられているのにぎょっとした人も多いでしょう。もちろん、日本だってすでに街中に多くの監視カメラが張り巡らされているのですが、日本では人々に威圧感を与えないようなるべく目立たない形での設置が好まれるのに対し、中国ではむしろこれ見よがしに「監視しているぞ」ということを誇示するような設置がされていることが多いように思います。

カメラの設置だけではなく、画像を認識する技術も急速に進化しています。ここでは、今年の9月にAIを使って個体認識を行う技術を開発している新興企業を訪問した際の話をしたいと思います。この企業の社員は平均年齢が26歳と非常に若く、ほとんどが清華大学とか北京大学といったトップクラスの大学を卒業していて、「中国で1番頭が良い企業」と自他共に認めるようなところです。



この企業を訪問すると、オフィスに設置された監視カメラが様々な角度から捉えた訪問者の画像が大きなモニターに大きく表示されます(下の写真:写っているのは筆者)。これは個人を特定化しているわけではなく、短髪でリュックを背負っている、青い長袖シャツを着ている、などいくつかの特性を写真から抽出して蓄積し、膨大な匿名データをある特徴をもったいくつかのカテゴリーに分類する「セグメント化」のために行っているものです。さらに、このビルの入り口に設置された監視カメラが道行く無数の歩行者を四六時中撮影しており、この人は男か女か、何歳ぐらいか、というデータを常に集めています。そうやってできるだけ多くのデータを集め、セグメント化のための精度を上げていく、ということをやっているわけです。

AIによる顔認証のテクノロジーは、カメラに映りこんだ人物がどういう人なのか、ということを特定化、アイデンティファイするものです。この技術を使えば、蓄積された個人データと照合してその人を特定化することができますし、犯罪者や指名手配犯のリストに載っている人物であれば、そのリストと照合して特定化し、逮捕したりすることもできます。

つまり、同じAIを用いた顔認証といっても「匿名を前提としたセグメント化」と「顕名性に基づいた同定化」という異なるベクトルのものが存在するわけです。

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