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百田尚樹はなぜ愛され、なぜ憎まれるのか――特集・百田尚樹現象(1)

ニューズウィーク日本版 / 2019年6月27日 17時0分

岡はあるとき、百田から『ナイトスクープ』の分刻みの視聴率グラフを見せられた。ちょっと下がった原因は展開がもたついたからチャンネルを変えられた、上がったのは盛り上がるように山場を作ったからといった形で百田は事細かに分析してみせた。小説執筆中も何度も「チャンネルを変えられないようにせんとなぁ」というつぶやきを聞いている。

今となっては誰も指摘しないが、こうした百田の作品は、現代屈指のストーリーテラーからも高く評価されてきた。『ボックス!』(講談社文庫、13年)の解説で、「メタルギア」シリーズで知られる世界的なゲームデザイナー・小島秀夫がこう記している。「(百田作品のキャラクターは)外見や血統、人種、性別、敵も味方もない、人としての強さと美しさが真摯に描かれる。......どんなジャンルを描こうと、百田さんが常に人気作家である理由はそこにある」

伝説のボクサー、ファイティング原田を描いたノンフィクション『「黄金のバンタム」を破った男』(PHP文芸文庫、12年)の解説を書いた増田俊也は、もっと直截的な賛辞を贈った。大宅壮一ノンフィクション賞を受賞するなど、業界屈指の書き手である増田は、「論文のような評伝」が多い現状を嘆き、読ませることの重要性を知っていると百田を評価する。そして、目標とする作家は「百田尚樹さんです」と「はっきりと言う」と明記するのだ。

06年までどこにも相手にされなかったオールドルーキーは、実力でのし上がり、わずか数年足らずでベストセラーと高評価を連発する出版業界の希望になっていく。同じジャンルは繰り返さない、と明言し多彩に描き分ける百田を出版不況に悩む業界が放っておくわけもなく、各社はこぞって駆け寄り、新作を欲しいと口説いて回った。

1つの頂点は13~14年だ。『海賊~』で本屋大賞受賞、『永遠の0』が映画化され、異例の大ヒットを記録した時である。やがて彼はデビュー作から数年で、もう1つのメディアに足を踏み出していく。その転機は12年にあった。

※続き:百田尚樹特集(2)はこちら
幻冬舎・見城徹が語った『日本国紀』、データが示す固定ファン――特集・百田尚樹現象(2)

【関連記事】ニューズウィーク日本版はなぜ、「百田尚樹現象」を特集したのか

※百田尚樹氏の3時間半にわたる独占インタビュー『僕は右派と左派の真ん中』は、本誌のみに掲載


※6月4日号(5月28日発売)は「百田尚樹現象」特集。「モンスター」はなぜ愛され、なぜ憎まれるのか。『永遠の0』『海賊とよばれた男』『殉愛』『日本国紀』――。ツイッターで炎上を繰り返す「右派の星」であるベストセラー作家の素顔に、ノンフィクションライターの石戸 諭が迫る。百田尚樹・見城 徹(幻冬舎社長)両氏の独占インタビューも。



石戸諭(ノンフィクションライター)


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