幻冬舎・見城徹が語った『日本国紀』、データが示す固定ファン――特集・百田尚樹現象(2)
ニューズウィーク日本版 / 2019年6月27日 17時0分
「『日本国紀』は百田尚樹という作家の作品であり、百田史観による通史だ。百田尚樹という作家が、日本という国の歴史をこう捉えたということ。これがはるかに大事なんだよ。まさに叙事詩だ。彼は歴史家じゃなくて作家。作家によって、新しい日本の通史が書かれるという興奮のほうが大きい。僕は百田尚樹がどんな政治信条の持ち主でも出しましたよ」
――右派の本が売れているから、ビジネス戦略として『日本国紀』を出したのか。
「そんなことは1ミリも思っていない。僕にはビジネス的に右派が売れているから右派の本を出そうという考えは全くない。右派的な本や雑誌ばかりが売れるのはどうかと思っている。もちろん、売れることは大事だ。売れる本があるから、全く売れないと分かっていても世に必要な本が出せる。僕が元日本赤軍、極左の重信房子の本を何冊も出していることから分かるでしょう。その時は批判なんて来なかった。僕は右でも左でもない。見城という『個体』だよ」
本誌31ページより
インタビューでも語っているように、百田もまたこの本は学術的な歴史書だとは認識していない。日本の歴史を「私たちの物語」として書いたのだと語る。その上で、「売ることが一番大事」と断言した。
「僕もこの本は売れてほしいというだけだ。65万部じゃまだ足りない」と見城は平然と言う。しかし、彼が得意としてきたテレビを活用したプロモーション戦略はこの本では使えないという。「テレビは絶対に取り上げない」からだ。見城と百田の思いはここでシンクロする。
――では、なぜ売れたのか。
「売れている理由は明確でしょ。百田さんの史観と文章によって、歴史はこんなに面白いのか、というのが分かるからだ。特に12章以降の戦後史はこの本のハイライトで面白い」
右派的な歴史観が強く打ち出される戦後史が面白い、と言われてうなずくことはできないが、見城の分析はデータを見る限り、ポイントを押さえていることが分かる。
全国のTSUTAYAとTポイント提携書店のPOSデータを分析するサービス「DB WATCH」を見てみよう。『日本国紀』は刷り部数相応に売れており、百田のオピニオン系の書籍も数字が動いている。ここから「強いファン層」が存在し、歴史観に共鳴していることは推測できる。
であればこそ、初版以降、多くの修正が出たことについてどう考えるか。百田は「初版の読者には申し訳なかったという思いがある」と言い、正誤表も「あってもいい」と語っているが、見城はどうか。
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