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幻冬舎・見城徹が語った『日本国紀』、データが示す固定ファン――特集・百田尚樹現象(2)

ニューズウィーク日本版 / 2019年6月27日 17時0分

■「面白い」と「売れる」がカギ

犬はほえる、がキャラヴァンは進む──。有名なことわざになぞらえれば、見城の心境はこんなところだろう。経営のリアリズムからすれば、売れる作家の売れる本に邁進するのは当然の帰結ではある。イデオロギーうんぬんよりも、見城にとっては「稀代の小説家・百田尚樹」と売れる本を作れる喜びこそが根源にあると言えそうだ。

とはいえ、作家を守る上でもやはり元マネジャーにせめて取材依頼は出すべきだったし、「やましいこと」がないことを証明するためにも、修正箇所の正誤表は必要なのだ。私と見城で考えが異なる点は多々あったが、一方で、見城の言葉は百田尚樹現象を読み解くヒントになっている。

本誌30ページより

ここでも、キーワードは「面白い」と「売れる」だ。補助線にもう1つのデータを出そう。『日本国紀』の併買データを見ると、同書と同じ時期に出版されて全く同じ価格の、スウェーデンの公衆衛生学者ハンス・ロスリングらによる『FACTFULNESS』(日経BP社)が上位にランクインしている。世界をより良くするために、ファクトを虚心坦懐に見る力を養おうという1冊である。

これをどう読み解くか。『FACTFULNESS』を活用し、百田本を批判したいという気持ちで買っているという人は残念ながら少ないだろう。示唆されるのは「売れているから買ってみよう」という層が一定数いること、そして百田は「強いファン層」だけでなく、こうした「ふわっとした購買層」までリーチしていることである。



この日、見城は堂々と「正論」を語った。

「通史が小説のように面白く読めたら、それは売れるでしょう。『面白い』は大事に決まっているじゃないか。これがダメだって言うなら、批判する側が、批判するだけでなく通史を書いたらいい。それぞれの歴史観を打ち出せばよくて、あとは読者が評価する」

一連の取材を終えてから、作家の津原泰水が幻冬舎文庫で刊行するはずだった小説が、『日本国紀』を批判したことで出版できなくなったと公表した。それを受けて見城が津原の本の実売部数を暴露するツイートをしたところ、作家をはじめ言論界から批判が集まり、見城はツイートを削除し、謝罪する事態となった。

これを書いている現在も、騒動を報じた朝日新聞と毎日新聞を百田がツイッターで批判し、その言動に多くの「いいね」がつく。論争は広がり続けている。

※続き:百田尚樹特集(3)はこちら
『日本国紀』は歴史修正主義か? トランプ現象にも通じる本音の乱――特集・百田尚樹現象(3)

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【百田尚樹現象】「ごく普通の人」がキーワードになる理由――特集記事の筆者が批判に反論する
ニューズウィーク日本版はなぜ、「百田尚樹現象」を特集したのか

※百田尚樹氏の3時間半にわたる独占インタビュー『僕は右派と左派の真ん中』は、本誌のみに掲載


※6月4日号(5月28日発売)は「百田尚樹現象」特集。「モンスター」はなぜ愛され、なぜ憎まれるのか。『永遠の0』『海賊とよばれた男』『殉愛』『日本国紀』――。ツイッターで炎上を繰り返す「右派の星」であるベストセラー作家の素顔に、ノンフィクションライターの石戸 諭が迫る。百田尚樹・見城 徹(幻冬舎社長)両氏の独占インタビューも。



石戸諭(ノンフィクションライター)


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