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アマゾンが支配する自動化社会というディストピア

ニューズウィーク日本版 / 2019年7月5日 16時15分

ウーバーの運転手やフリーの犬の散歩代行業者も「雇用」に含まれるが、生活できる賃金は保障されていない。テクノロジーは驚異的なスピードで進歩しているのに、社会の変化の波を受ける労働者を手助けする政策のほうが追い付いていないのだ。テクノロジーの進歩で利益を得るのは、少数の人間。大多数は、自分の能力を生かせない不安定な雇用にしがみついている。



スペインの首都マドリードで犬を散歩させる犬の散歩代行業者 PAUL HANNAーREUTERS

クリックごとに膨大な情報が

「私たちは人類の歴史における未知の領域にいる」と言うのは、ライス大学(テキサス州)のコンピューター科学者モシェ・バルディ。「大きな岐路に立たされている」

小売業の置かれた状況は深刻だ。利益率で言えば、リアルな小売店でのビジネスはいくら効率を改善しても、超高速で成長するネット通販に太刀打ちできない。もちろんネット通販の世界も競争が熾烈で、世界を見渡せばトップを行くのは中国のアリババ・グループだが、アメリカでの存在感は薄い。アマゾンが立ちはだかっているからだ。

5兆ドルともいわれるアメリカの小売市場の5分の1が20年までにはウェブに移行し、その利益の3分の2をアマゾンが独占するという試算もある。アマゾンは今でもアメリカ人がネット上に落とす金額の半分を懐に入れている。今や書籍、音楽、ビデオゲーム、携帯電話、電子機器、小型家電、玩具、雑誌購読などを幅広く扱う国内最大の小売業者で、「エブリシング・ストア(何でもそろう店)」だ。

さらには食品販売を含め(自然食品チェーンのホールフーズ・マーケットを買収)、ほぼ全てのカテゴリーでシェアを拡大している。テレビドラマや映画も作るし、電池やベビーフードの製造も手掛けている。

またザッポス(シューズ)、ショップボプ(ファッション)、IMDb(インターネット・ムービー・データベース)、オーディブル(オーディオブック)、ツイッチ(ゲームのストリーミング)といったブランドを傘下に収め、手作り品の販売代行やオフィス用品の販売も手掛ける。

しかも利用者がクリックするたびに、個人情報などの重要なデータを入手している。それらのデータはビジネスのさらなる拡大のために使われる。この最強のビジネスモデルのおかげで、アマゾンの従業員1人当たりの売上高は国内最強のライバルであるウォルマートの2倍近い。

アマゾンは世界中の倉庫に10万台以上のロボットを導入し、さらに増やす予定だ。ロボットによって1つの倉庫で年間2200万ドルを節約できるという。将来、ドローンや自動運転車での配達も視野に入れている。アマゾンでは多くの従業員が働くが、アマゾンの従業員が1人増えると、リアルな小売店の従業員が2人減ると考えられている。それには理由があるようだ。

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