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アマゾンが支配する自動化社会というディストピア

ニューズウィーク日本版 / 2019年7月5日 16時15分

「実際、上位20%層が平均年収5万ドル以上を獲得し、逆に下位40%層では収入が減った。残り40%の中間層では世帯所得が1万ドル増えたが、支出も増加した。食料、住宅、交通費。さらに医療費は急上昇し、その上に携帯電話やネットなどデジタル関連の費用が必要だ。たいていの人はほかのものを買う余裕がなくなり、非常に価格に敏感になっている」

雇用を守るため団結を訴えるニューヨークのタクシー運転手 SPENCER PLATT/GETTY IMAGES

自動化への果てしない欲求

ディスカウント店は床面積当たりの従業員数が通常の店より少なく、賃金も低い傾向にある。従業員1人当たりの労働時間も減っている。シカゴに本拠を置く世界的な転職・再就職支援企業「チャレンジャー・グレイ&クリスマス」のジョン・チャレンジャーCEOによれば、こうした傾向は今後もっと顕著になりそうだ。

「80〜90年代に製造業に起きたことが小売業でも起きようとしている」と彼は言う。「店員がテクノロジーに勝てないこと、多くの従業員が既に職を失っていることは疑いようがない」

彼らはどこへ行ったのか。多くが流通部門、つまりトラックの運転や倉庫業務に流れた可能性が高い。



それでも、昨年12月の買い物シーズンを前にアマゾンが雇った臨時従業員の数は、前年より2万人も少ない10万人だった。アマゾンの広報担当者は、減少した原因は自動化ではないと主張しているが、誰も納得していない。

金融大手モルガン・スタンレーのアナリスト、ブライアン・ノワックは最近のレポートで、賃金上昇に対するアマゾン株主の不安を和らげるため、自動化で労働者の雇用数は減っているから全体的なコストは下がると指摘した。

コロンビア大学のホッド・リプソン教授(機械工学)はクリエーティブ・マシン研究所でマシンの訓練
をしている。目的は優れた反射神経を持ち、好奇心旺盛で、台所でも創造性を発揮できるようにマシンを育てることだ。

取材に行くと、彼は調理マシンを調整してペーストやジェル、パウダーその他を材料にした素敵な一品を作ろうとしていた。

ミシュランの3つ星シェフに負けない料理ができそうですね、と筆者が言うと、教授はうめいた。自分のような科学者やエンジニアには、あらゆる困難な作業を自動化したいという果てしない衝動があると彼は言う。エンジニアリングの本質は、煩わしさを軽減し、生産性を高めることだ。過去にはそれが正しかった。でも、今は確信を持てないという。

「オートメーションとAIは、人間の仕事の大半を奪うだろう」と、彼は言う。「私たちが生きているうちではないかもしれないが、孫の時代にはそうなる。これは人類の歴史における新たな状況であり、まだ覚悟ができていない。自分では準備ができていると思うかもしれないが、実際は違う」

<本誌2019年5月21日号掲載>


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エレン・ルペル・シェル(ジャーナリスト)


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