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アマゾンが支配する自動化社会というディストピア

ニューズウィーク日本版 / 2019年7月5日 16時15分

リアルな小売店はネット通販に駆逐されると、数年前から言われている。しかし、まだその事態は起きていないようだ。実際、1業者が撤退するごとに2つの業者が新たに参入している。

小売りは競争の激しい業界で、テクノロジーは消費者の買い物の方法だけでなく、ブランドとのつながりも変化させる。例えば、アマゾンが実店舗を出すと誰が想像しただろうか。またネット通販は小売市場の10%を占めるというが、残りの90%は実店舗が占めている。ただし実店舗の変化も激しく、アメリカの労働者に深刻な影響を与えている。

二極化が進む店舗の客層

デロイトコンサルティングで小売部門を率いるケーシー・ロバウーによれば「伝統的な小売業者が市場シェアを失っているのは、オンライン対リアルな小売店の戦いの結果だけではない」。むしろ「小規模で身軽なリアルの小売業者から戦いを挑まれている」。



技術の進歩のおかげで、小さくて身軽な業者は大規模な投資をしなくても消費者に商品を届けることができる。例として、ロバウーはファストフードを提供するフードトラックを挙げた。固定店舗と異なり、フードトラックは機敏だ。最適な時刻に、最適なエリアに移動して販売できる。フェイスブックや他のメディアを使用してメニューや場所の情報を発信し、特定の地域のニーズに合わせて商品を調整することも簡単だ。

「テクノロジーによって、新しい市場への参入コストが削減されたため、小売業界では巨大企業が減り、小規模企業の競合が増える」と彼は言う。「消費者の特定のニーズや欲求を満たすために、企業も多様化している。個々の業者の儲けは減るが、それでも業者の数は増え続ける」

おかげで、小売業界は2層に分かれた。高級なブティックタイプの店は主に富裕層を対象とし、安売り店は価格に敏感な消費者を狙う。「アメリカでは昨年に1000以上のディスカウント店がオープンした。そして高級志向のニッチな店も同様に増えている」と、ロバウーは言う。

一方で、減っているのはマーケティング業界で言う「バランスの取れた」店だ。つまり品質にも価格にも目配りする伝統的なデパートやショッピングモールなどの業態だ。

こうした「バランスの取れた」店舗の減少と、過去10年における中産階級の減少が並行していたのは当然だろう。「07〜17年の間に、世帯所得は単純平均で5万ドルも増加したが、増加分のほとんどは所得の上位20%の層のものだ」とロバウーは言う。

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