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アマゾンが支配する自動化社会というディストピア

ニューズウィーク日本版 / 2019年7月5日 16時15分

彼らこそがアメリカの中流階級を支えてきた人たちだ。あなたが娘の結婚式で着るスーツを作ったときに寸法を測ってくれた気の利くデパート店員、結婚式前のディナーのために丁寧に肉を切ってくれた気前のいい肉屋、新婚旅行の計画を手伝ってくれた旅行代理店の人もそうだ。

もちろん、人間の労働者は疲れたり機嫌が悪くなったり、気を散らしたりする。とんでもないミスも犯す。機械は正確だし、偏見を持たない。しかも大量のデータを蓄積できる。

グーグルはアメリカだけでも毎分360万件の検索を実行している。スパム業者は毎分1億件のメールを送り、スナップチャットは毎分52万7000枚の写真を送信し、ウェザー・チャンネルは毎分1800万件もの天気予報を提供する。これらのデータを集め、体系化し、分析すれば、ほとんどあらゆる高次元のタスクに応用できる。



データは人間の経験や直感の代わりもできる。オンライン・ショッピングやソーシャルメディアのサイトは私たちの好みを「学習」し、その情報を使って評価を行い、私たちの決定や行動に影響を与える。かつては人間にしかできないと思われた仕事でも、どんどん機械のほうが上手になっている。

「コンピューターは見ることも聞くこともでき、人間以上に人の顔を識別できる」と、ライス大学のバルディは言う。「機械は人間の世界をほんの数年前よりずっとよく理解できるようになった。人間の脳で、機械が模倣できないものは何も見つかっていない」

一方で、コーネル大学のコンピューター科学者バート・セルマンは、現実の世界をコンピューターが理解できるように翻訳する「知識表現」の専門家で、まだコンピューターは人間と同等の能力に達していないと考える。コンピューターには「常識」がないし、言語の深い意味を把握できず、時に間違った方向に進んでしまう。ただし、そんな欠陥は時間が解決するはずで、「あと15年か20年で機械は人間の知性に追い付く」だろうとセルマンは言う。

それに、ロボットが完璧である必要はない。人間と同等か「ほんの少し有能」であればいい。その「ほんの少し有能」を目指して、研究者たちは日夜格闘している。

例えば、スーパーで私たちの多くはセルフレジの列を避ける。自分でやるより、店の人がレジに打ち込むのを待つほうが楽だからだ。だから今のところ、レジの仕事がなくなる恐れはなさそうだ。しかし小売業の経営に詳しいマサチューセッツ工科大学のゼイネップ・トンによれば、セルフレジはまだ発展途上。現状では「客に仕事を押し付けていると買い物客が反発しかねない」が、もっと進化すれば「小売業界の雇用に大きな衝撃を与えるのは確実」だと言う。

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