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日本の「分断」を追う10年プロジェクト始動──第1回調査で垣間見えた日米の差異

ニューズウィーク日本版 / 2024年1月31日 17時0分

私が直接取材した2000年と2016年の選挙はともに、一般投票の総得票数でまさった候補が敗れる珍しい選挙であった。ただ、同じ事象でも、分断の激化と相手への中傷という点で、比較にならないほど後味が悪かったのが、2016年の選挙であった。

米国の継続調査で、驚くほどの「分断線」が明らかに

分断の激化という現地での「皮膚感覚」を裏付けてくれたのは、ピュー・リサーチセンターなどの継続的な調査である。同センターでは、10の価値観について定点観測を続けているが、2004年と2017年を比較すると、わずか10数年の間に、保守層(共和党支持層)とリベラル層(民主党支持層)の「分断」がどんどん広がっていることが、図表1、2ではっきりと確認できる。

また、下記のギャラップ社の継続調査から、「メディア不信」の偏りが明確に読み取れる。1972年においては、米国民は、共和党、民主党の党派や無党派にかかわらず、全体としてメディアを信頼しており、「とても(Great deal)信頼している」「まあ(Fair amount)信頼している」の合計で、68%にものぼっている。その後、下落傾向にあるものの、2000年前後は、まだそれほど党派別の差はない。

だが、それ以降、共和党支持者の間で信頼度は急速に低下していく。トランプ政権を経て、2022年のデータでは、民主党支持者の70%がメディアを信頼しているのに対して、共和党支持者では14%にすぎない(図表3参照)。保守とリベラルで、視聴・購読しているメディアが全く違うことも、ピュー・リサーチセンターなどの調査でわかっている。

一方、日本の「分断」はどうなっているのだろうか。自民党の安倍晋三政権が長期にわたって続いた中で、保守層とリベラル層の対立の激化や、メディアへの不信が高まりつつあるという指摘はある。そうした分断や亀裂を憂慮する人は多いが、分断を修復する処方箋を考える上でも、まず、日本の分断がどこにどういう形で存在しているのか、その「実相」をつかむことが重要だろう。

新聞社からスマートニュースのシンクタンク(スマートニュース メディア研究所)に転職するに際して実現したかったのは、日本においても、長期間にわたり人々の価値観の変化を追いかけたり、また人々の価値観の形成とメディア接触との関係を調査して、世の中にわかりやすく伝えることであった。

その思いは私の個人的願望から、やがて、「健全な情報空間の創出」を目指すスマートニュースの経営陣の賛意を得るに至り、2023年を皮切りに、10年という長期にわたるプロジェクト(2年ずつの調査)がスタートした。

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