日本の「分断」を追う10年プロジェクト始動──第1回調査で垣間見えた日米の差異
ニューズウィーク日本版 / 2024年1月31日 17時0分
日本のSMPP調査におけるイデオロギー軸は、調査対象者に、11段階のスケールで自己認識を問い、それをもとに分類している。(0〜4がリベラル、5が中間、6〜10が保守と分類)。本調査(郵送調査)での分布は、日本における保守は48%、中間が23%、リベラルが29%という結果となった。実は、日本では自分の立ち位置が「わからない」と答える人の割合も多いが、日米の比較をする上では「イデオロギー(の傾向)を自覚している人」の中での割合で比較するほうが良いと判断した。
日本の保守・リベラルのイデオロギー軸は、安全保障や憲法
過去の政治学研究からは、日本における「保守ーリベラル軸」は、安全保障や憲法問題に特徴的にあらわれ、米国のように、保守=「小さな政府」志向、リベラル=「大きな政府」志向という対立としてはあらわれないことが知られている。
今回のSMPP調査でも、従来の知見が裏付けられた。
「防衛力強化」の賛成率(「賛成」もしくは「どちらかといえば賛成」と回答した人の割合)では、保守層がリベラル層を上回り(図表4)、「憲法9条を変えるべきではない」の賛成率ではリベラル層が保守層を上回った(図表5)。それぞれ有意な差がみられた。
一方、税制についての設問で、「消費税増税もしくは10%維持に賛成」の人の割合でみると、保守層のほうがリベラル層に比べて、むしろ、やや割合が高かった(図表6)。米国では、リベラル層が増税(「大きな政府」)を容認しがちで、保守層は「小さな政府」志向で減税に熱心だが、日本ではその傾向が見られないことが分かる。
同性婚、環境問題などで、日米で同様の傾向
では、日米比較に入りたい。まず、世界的にも大きな議論になっている「同性婚」「移民受け入れ」「環境保護」という3点を取り上げる。これらの社会問題では、いずれも、米国ではリベラル層が前向きであり、保守層を大きく上回る「賛成率」となっている。
一方、日本のSMPP調査でも、賛成率を取ると、「リベラル」「中間」「保守」の順に、きれいにグラフが右肩下がりになり、米国と同様の傾向が確認できた。ただし、その「右肩下がり具合」は、米国ほどではない。つまり、保守層とリベラル層の「断層」はみられるものの、米国に比べると、かなりマイルドである(図表7〜9)。
米国では、「民主主義が脅かされている」と感じる人が多い
次に、「政治とナショナリズム」について見てみたい。
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