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日本の「分断」を追う10年プロジェクト始動──第1回調査で垣間見えた日米の差異

ニューズウィーク日本版 / 2024年1月31日 17時0分

「スマートニュース・メディア価値観全国調査(SmartNews Media, Politics, and Public Opinion Survey)」(以下、SMPP調査)は、上記の経緯から生まれた。調査を行うにあたって研究会を立ち上げ、共同座長には、「世界価値観調査」や「アジアンバロメータ調査」で日本の中心になっておられる池田謙一・同志社大学教授(社会学部メディア学科)と、豊富な調査経験に加え、日本の社会調査データの保存と共有に先導的役割を果たしてこられた前田幸男・東京大学教授(東京大学大学院情報学環・東京大学社会科学研究所)のお二方に就任をお願いした。

また、今回の日米比較を共同で行った小林哲郎・早稲田大学教授(政治経済学術院)など、多様な分野の研究者の方々にメンバーに加わっていただき、調査のフォーカスを定め、質問項目を練り上げていった。調査は郵送とWebの2方式で実施したが、本稿は、2023年3月に全国の男女4460人を対象に行い、1901人が回答した郵送調査の結果から分析している。

創設5年の新しいシンクタンクのアイデアが、大規模世論調査として結実したのは、両座長や研究会メンバーの方々のご尽力のおかげである。

日米比較の手法

さて、本調査は、日本国内の居住者を対象にしたものであり、調査の目的は、上記のように、日本の中の「分断」の実相を探ることである。とはいえ、筆者自身のもともとの着想が、米国における分断やメディア環境の変化から来ているため、まずは、可能な範囲で「日米の比較」を行ってみたい。

米国のデータで、日本と比較する上で主として使ったのは、前述のピュー・リサーチセンターのほか、ギャラップ社、ニューヨークタイムズなどの調査である。

ただ、そもそもSMPP調査が日米比較を目的としていないため、米国側の調査の設問や時期は少し違っている。類似の設問を取り出すことで大枠の比較はできるが、厳密な比較ではないことは、あらかじめご了承いただければ幸いである。なお、SMPP調査は2023年3月に実施したため、米側のデータは基本的に当時の最新データを基に比較を行った。

米国におけるイデオロギー軸(保守、リベラル)は、共和党支持者か民主党支持者かという区分で代用した。本来、イデオロギーと党派性は関連しつつも別個の概念だが、分断化が進む米国では両者の相関が高くなっており、共和党支持=保守層、民主党支持=リベラル層、と大まかには読み替えることができる。調査によっては、「Independent(無党派層)」という区分を置くものもあるが、ピュー・リサーチセンターは、無党派層などに対してさらに「共和党寄り」か「民主党寄り」かを聞き、多くをそれぞれの層に分類している。これは、明確な政党支持のない、いわゆる"Leaner"と呼ばれる人たちも、多くの場合明確な政党支持者と同じようにふるまうことが知られているためである。

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