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日本の「分断」を追う10年プロジェクト始動──第1回調査で垣間見えた日米の差異

ニューズウィーク日本版 / 2024年1月31日 17時0分

マスメディアの信頼度をイデオロギー軸でみたときに、米国では大きな差がみられるのに対して、日本ではほとんど差がみられないのは興味深い。

この現象について、今回の共同研究者である小林哲郎・早大教授は「日本では、放送法などの制度的仕組みもあって、放送会社は『不偏不党』を意識せざるを得ない。大手新聞社も社是として、『公正な報道』や『不偏不党』をうたっている。また、米国は新聞社などの経営破綻も多く、全般的に報道の質の低下が顕著なのに対し、日本はまだそこまでには至っていない。受け手側である国民も、米国ほど政治的立場がわかれていないことも影響しているのではないか」と分析している。

また、マスメディア(テレビ、新聞など)の媒体ごとの接触をみてみよう。

ピュー・リサーチセンターの調査では、米国では、政治や選挙に関する主要な情報源としてFOXニュースをみる人のほとんどが保守層なのに対し、公共ラジオ放送のNPRのリスナーや、ニューヨークタイムズの読者のほとんどはリベラル層であるなど、多くの媒体で党派的な偏りがみられる(図表15)。

これに対して、日本では、朝日新聞をよく読む人の中で、わずかにリベラル層が保守層より多く、読売新聞やNHKでは保守層が多かった(リベラル29%、保守48%という日本全体の分布の姿とほぼ同じ)という程度の差はあるものの、米国のような極端な差はみられない(図表16)。

以上が、今回のSMPP調査と、米国側の主な世論調査をもとに、「日米比較」を試みた結果である。

日本の「保守ーリベラル軸」は、安全保障や外交・防衛政策を中心に理解されており、経済政策とは相関しにくい。また、同性婚、移民問題などで米国と同様の傾向はみられるものの、米国ほどの差はない。さらに、マスメディアへの信頼度については、保守層とリベラル層の差が極端な米国に対して、日本ではほとんど差がみられないことが確認された。

ただ、上記のような日米比較だけをもって、日本における「分断」はたいしたことがない、と結論づけることはできない。今回のSMPP調査では、日本における分断とは、どこに存在したり、どういう形であらわれつつあるのかを、多角的に探っている。今後のこの連載コラムでは、調査分析に携わっていただいた各分野の専門家の方々から、仮説も含めた分析結果を示していく。

なお、SMPP調査は、今回で終わりではない。10年計画として、2年ごとに5回続けるところに特徴があり、研究者の方々と共に取り組む挑戦でもある。

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