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「Gゼロ」提唱者イアン・ブレマーと読み解く、グローバルサウスの正体

ニューズウィーク日本版 / 2023年9月23日 18時0分

9月初旬にインドで行われたG20で面会したインドのモディ首相(中央)と、ブラジルのルラ大統領(右隣り)、アメリカのバイデン大統領(左隣り) EVELYN HOCKSTEIN―REUTERS

<いまなぜ「グローバルサウス」という概念が重要なのか。有力国の現状と中国の影、そして日本が取るべき道とは――米ジョージタウン大学教授サム・ポトリッキオが、イアン・ブレマーに聞く>

「グローバルサウスは冷戦時代、当時のソ連が欧米に対抗するためにつくり出した概念だ」あるロシア人ジャーナリストは、私との対話の中でそう語った。「植民地主義や帝国主義と戦うのだと駆り立てるのが、彼らと連携するには最良の方法だった」

彼は母国ロシアのウクライナ侵攻を痛烈に批判する一方、グローバルサウスという古くて新しい一大勢力に注目していた。グローバルサウスの国々は、ウクライナ戦争で必ずしもロシアを批判しなかった。グローバルサウスが力を増した現在、それ自体が「大国」と化した──このロシア人ジャーナリストが言外に示したことは明らかだ。

グローバルサウスとは大まかに、アジア、アフリカ、中南米、オセアニアの途上国を指す。その台頭を最も体現している国はインドだろう。S&Pの時価総額の15%近くを占める欧米の優良企業に加え、グーグルの親会社アルファベットやスターバックス、IBM、マイクロソフトなど世界的企業のトップ、それに世界銀行の新総裁もインド出身だ。

6月下旬に訪米したインドのナレンドラ・モディ首相は、ワシントンで熱烈な歓迎を受けた。9月9~ 10日の20カ国・地域(G20)首脳会議では議長国も務めた。

ロシアがウクライナにいわれなき攻撃を開始した昨年2月24日以降、グローバルサウスのかなり多くの国がウクライナからもロシアからも中立を維持しようとした。昨年3月のウクライナからのロシア軍の即時撤退を求める国連決議の採択では、インドや中国、アフリカの国々の3分の1など35カ国が棄権した。現在ニューヨークで開催中の国連総会でも、グローバルサウスの動向が注目されている。

ウクライナでの戦争は、西から東への人口的・経済的シフトを国際安全保障への影響力に転換する地政学的チャンスをグローバルサウスに与えている。これらの国々は経済力の向上と人口増加を背景に自信を増し、よりバランスの取れた世界情勢を構築したがっている。単にどちら側に付くかを選ぶのではなく、外交の調停・交渉役として新たな世界秩序をつくり出す可能性を歓迎している。

中国はグローバルサウスを率いることで超大国として有利な立場に立とうとし、ロシアはいまだに冷戦時代の「非同盟」国の名残を享受している。アメリカも国益拡大のため、グローバルサウスへの対応に本腰を入れるだろう。覇権を争う大国の論理で世界は分断に向かっている。

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