発災10日後も寝具が届かず...能登入りした医師が断言、災害支援成功に不可欠な「ある人材」とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年1月26日 18時0分
1.5次避難所とは、災害関連死を防ぐとともに、当面の落ち着いた生活環境を確保するため、被災地以外の避難所に移ってもらう「2次避難」の受け入れ先が決まるまでの短期間、被災者が滞在する避難所である。
その場所として指定された金沢のいしかわ総合スポーツセンターは400人を優に収容できるほど広く、冷暖房・空調設備も整ったメインアリーナ、多目的・多機能・バリアフリーのトイレやシャワー・更衣室、救護室といった施設が充実していた。ほかにもサブアリーナや多目的ルーム、会議室などもある。感染症の隔離や要介護者などを集約した支援もでき、広い駐車場があるので被災地から要介護者などを搬送するためのヘリも使えそうだ。
ただ避難所開設に当たっては、単に準備した災害対策用テントを並べ、そこにマットや毛布を置いて人々を収容すればいいという話ではない。そこに滞在する人にどのような配慮や介助が必要か。トイレや食事配給場所までの距離などを考え、どこに要配慮者を滞在させればいいか、などを考慮する必要がある。
また、できれば食寝を分離して、食事や談話スペース、子供がいる場合は遊び場も設置を検討したい。感染症予防や寒冷地対策を考えると、床にそのまま寝るよりも段ボール製ベッドなどを利用して床から一定の高さを保ちたい。金沢市内の病院にある簡易ベッドも必要に応じて提供してもらおうという話にもなった。高齢者が落下しないよう、ベッドの大きさに合った敷布団を用意することも必要だ。希望者の受け入れは、私が現場を視察した2日後の予定だった。準備を手早く進めつつ、被災者を受け入れながらニーズを基に改善していこうという結論になった。
技術と経験が奇跡を生んだ
その後、被災地の珠洲市に入った。
震災発生後1日目に救出すれば生存確率は74.9%、2日目は24.2%、3日目は15・1%、5日目ではわずか4.8%に低下するといわれている。今回、地震発生から5日、124時間ぶりに救出された珠洲市の93歳の女性がいる。奇跡に近い話である。
ただし、これは自衛隊や消防隊による救出だけでは、また普通の医師の立ち会いでは助からなかっただろう。救出・救命は単に人を捜し当て、瓦礫の中から救い出せばいい話ではない。特に、長時間足や手など体の一部が挟まれている場合、組織が破壊され、また血流が遮断されている。急いで救出すると圧迫した部分が開放され、挫滅した組織からカリウムなどが大量放出、また循環血液量が急に変化する。その結果、挟まれているときは話すことができたのに、救出後に突然ショック状態に陥り、心停止を起こすことがある。これを圧挫症候群(クラッシュ・シンドローム)と呼ぶ。救出時にはこれを適切に処置できる医師が必要だ。
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