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発災10日後も寝具が届かず...能登入りした医師が断言、災害支援成功に不可欠な「ある人材」とは?

ニューズウィーク日本版 / 2024年1月26日 18時0分

このケースでは倒壊した家の2階の窓を割って家の中に入り込み、狭く暗く危険な閉鎖空間で負傷者を処置しなければならなかった。これにはCSM(confined space medicine=瓦礫の下の医療)という特殊な技能と特別な装備・器具類が必要だ。医師自らが身を守り、閉鎖空間で動けない負傷者に対して診察をし、必要な点滴や酸素吸入、低体温症への処置などをする。専門の救急医でもそのような状況下での特殊訓練を受けた者は少ない。

今回、幸運なことにそのような技術と経験を持つ稲葉基高医師がこの救助・救命に関わった。彼はピースウィンズ・ジャパンのプロジェクトである「空飛ぶ捜索医療団(ARROWS)」のリーダーで、19年に発足したARROWSを専属で指揮を執り、近年ほぼ全ての国内大災害に出動。国外でもウクライナ危機、トルコ・シリア地震などの自然災害や紛争地域で活動してきた。

平時にも全国の医療従事者向け災害派遣のトレーニングや、水も電気もない被災地で仮設病院を設営する多機関との合同訓練を企画運営していた彼だったからこそ、この困難な状況で冷静沈着に処置をして救命できたのだろう。今回、さまざまな自治体や病院、そしてNGOから医療チームが派遣されたが、このPWJ・ARROWSの支援はその迅速性と機動性で秀でていた。

災害派遣医療チームの活躍

通常、DMATなどの災害時の派遣医療チームは、平時には病院などで働き、災害時にボランティアとして1週間ほど派遣される。しかし、ARROWSは平時から約20名の常勤者と約500名の登録者を抱え、レスキュー隊から災害救助犬、ロジスティシャン、ヘリコプターや固定翼機、船、四輪駆動車両を持ち、捜索・救出・救命から物資支援・医療支援まで、現場で必要なさまざまな支援を独自に展開できる。今回も孤立集落や避難所への物資・医療支援から、救出・救命、そして救急患者のヘリ搬送など大活躍だった。

国際的にはこのようなロジの力・機動力を持つNGOは少なくない。固定翼機やヘリで大量の物資を運び、「野戦病院」を造り、大量のシェルターや水衛生器材で大きな難民キャンプを設営してしまうNGOまである。日本でも大規模災害の際には自衛隊だけでは足りず、国内外の災害支援にたけたPWJ・ARROWSのようなプロフェッショナルの民間組織がもっと必要かもしれない。各自治体の緊急支援に関わる人材やロジの力を高めるためにも、このような経験値と専門性の高い民間団体の協力が重要だ。

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