発災10日後も寝具が届かず...能登入りした医師が断言、災害支援成功に不可欠な「ある人材」とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年1月26日 18時0分
NGOや国連を通じて大規模災害に関わってきた私は、過酷な環境下で休まず仕事をし続けた結果、燃え尽きてしまった人を何人も知っている。メンタルも体力も強靭で、ダウンするとは誰も思っていなかったような人たちだ。だから国連では、ハードな環境下で活動する場合、定期的また強制的に職員を休ませる。現場を離れ、ストレスを発散させる時間を持たせるのだ。
自分がやらないと仕事が回らないと考えるのは幻想だ。誰が抜けても、それをみんなで埋め合わせられるようにするのがチームでありマネジメントである。緊急時の責任ある仕事でも、それをチームと分かち合い、外部の支援者にも頼り、自分が抜けても活動が続く体制をつくる。これまでいつもそう自分に言い聞かせてきた。
被災者のニーズ、それに対する支援体制は時間とともに変化していく。緊急フェーズを過ぎても、能登半島には復旧・復興フェーズでの新たな課題、新たなニーズが生まれる。
今後、気候変動などの影響もあり、日本を含めた世界で災害が頻発化、甚大化するのは避けられない。自然災害以外にも、世界中に地政学的なリスクがあり、日本の周りでもその緊張感は高まっている。新型コロナウイルス感染症の次のパンデミックも来るか来ないかではなく、いつ来るかの問題といわれている。
今回の地震は、過疎化・高齢化が深刻で、かつ交通網が脆弱な「陸の孤島」のような場所で発生し、しかも最悪の厳冬期に発災したため被害が甚大になった。今後、災害や緊急事態で被災する人々や地域の高齢化・脆弱化は避けられないかもしれない。今の防災体制、緊急支援体制のままで本当によいのだろうか?
危機管理の司令塔が必要だ
新型コロナのような感染症危機に十分な対応ができなかったとの教訓から、内閣感染症危機管理統括庁が内閣官房に創設され、米疾病対策センター(CDC)の日本版ともいうべき国立健康危機管理研究機構が来年以降に発足する。
1つの案は、日本版CDCならぬ日本版FEMA(フィーマ、米連邦緊急事態管理庁)を創設することだ。危機管理には過去の教訓や知見を集積し、司令塔また監理役としてさまざまな関係機関・組織の連携・協力を促し、課題を把握し、それを改善・修正するプロ集団が必要である。
新たな機構をつくるのが困難であれば、現在、防災や災害対応に関連する組織や機関の連携・協力体制が十分なのか、より迅速で効率の高い災害対応をするには何が足りないのかを検討する必要がある。
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