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「株式会社ハマス」の時価総額は5億ドル超、世界各地の系列企業の資金網がガザを支える

ニューズウィーク日本版 / 2024年2月9日 10時36分

サウジアラビアのアブドル・アジズ国王大学で会計学を専攻し、78年に卒業。その後はサウジアラビアにあるフランス系企業に就職し、87年から05年までは同国ジッダにあるホテル会社で経理部の管理職を務めた。

アラビア語を母語とし、英語を話す。

ここまでの経歴は、トルコ企業の「トレンドGYO」が18年の公募増資に際して財務当局に提出した資料に含まれている。

だが重要な2つの事項が欠けている。

まず、21年3月25日付のトルコの商取引登録官報によれば、カフィシェは新たにトルコ名を名乗り、トルコ国籍を取得している。

改名と国籍変更で、彼は国境を越えて移動しやすくなった可能性がある。

さらに、カフィシェを制裁対象リストに載せた22年の米財務省資料によると、カフィシェはハマス投資部門のナンバー2であり、「ハマスの投資ポートフォリオに含まれる複数企業の資金移転」に重要な役割を果たしてきた。

その1つがトレンドGYOだ。集合住宅や商業施設の販売会社で、投資家向けにトレンドREITという不動産投資信託も設けている。

本誌がトルコの企業情報を精査したところ、23年9月時点でトレンドGYOの株式は55%が市場で取引されており、一般市民や投資家から広く資金を調達していた。

同社の資料によると、トレンドGYOはトルコ全土で、AGプラザを含めて12の大型プロジェクトを完成させている。

同社が過去16年間で建設した商業ビルと住宅は合計で4万6500平方メートル以上になるという。

同社が開発したトルコ北部ブルサ市にある高級集合住宅の広告には、「近代的な建築と緑地による穏やかな生活への鍵」を提供するとある。

だが華やかな言葉の裏に、宣伝したくない事実が隠されている。

22年5月にトレンドGYOを制裁リストに載せた際、米財務省は「18年の時点で、トレンドGYOの発行済み株式の約75%をハマス分子が保有していた。さらにハマスは同社の株式1500万ドル相当を組織の幹部らにひそかに融通することを計画していた」と述べている。

同社のコーポレート・ガバナンス報告書によると、トレンドGYOの株式を大量に保有していたのは次の3人。

前出の会計士カフィシェ(13%)とイエメンの大富豪で実業家かつ政治家のハミド・アル・アフマル(17%)、そして同社副会長でイエメン国籍のサレハ・マングーシュ(30%)だ。

米財務省によると、中東各地にあるハマス系建設会社の運営とハマス本部への資金還流に最も深く関与しているのはカフィシェだ。

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