一般人から見れば「どちらも敵、貴族と僧侶の戦い」にしか見えない、アカデミズムとジャーナリズムの対立
ニューズウィーク日本版 / 2024年8月28日 11時0分
小川さやか+トイアンナ+鷲田清一+田所昌幸(構成:伊藤頌文) アステイオン
<クローズドな言論空間である「サロン」がたくさん誕生し、かつてないほどに言論の自由が花開いた時代とも言えるが...>
『アステイオン』100号の特集「「言論のアリーナ」としての試み」をテーマに行われた、小川さやか・立命館大学教授、ライターのトイアンナ氏、鷲田清一・大阪大学名誉教授、田所昌幸・国際大学特任教授による座談会より。
◇ ◇ ◇
アカデミズムとジャーナリズムの乖離
田所 1986年に創刊された『アステイオン』は、100号を迎えました。
そこで『アステイオン』の存在意義と、創刊からの38年という、この時代について改めて議論したいと思い、世代の異なる3名の執筆者にご登壇いただきました。
まずはどのようなことを考えながら執筆されたかについてお話しいただけますでしょうか。創刊時から『アステイオン』に関わられてきた鷲田さんは、いかがでしょうか。
鷲田 今号のテーマが「『言論のアリーナ』としての試み」ということで、『アステイオン』の創刊者たちが抱いていた思いに注目し、この雑誌が何を目指してきたのかを考えました。
山崎正和さんの論考を読み返すと、学問と評論、そしてジャーナリズムの乖離に対して強い危機感をお持ちだったことが感じ取れます。
評論は「日付のある思想」、学問は「日付のない思想」。その両者をダイナミックに往還できることが知性であると山崎さんは考えておられました。
そこで執筆者同士は当然ながら、また執筆者自身もこの「日付のある思想」と「日付のない思想」の中で格闘する「言論のアリーナ」を『アステイオン』は目指してきました。
しかし、今やアカデミズムもジャーナリズムも状況がさらに悪くなってしまった...という厳しさも感じます。
田所 物心ついた頃にはすでに『アステイオン』があり、その後、執筆者としてご参加いただいた世代の小川さんは、いかがでしょうか?
小川 私は95号の「アカデミック・ジャーナリズム」特集の鼎談に参加したので、今回はそれを振り返りながら執筆しました。
アカデミズムとジャーナリズムは、しばしば水と油のように扱われています。しかし、レヴィ・ストロースの著作など、文化人類学の古典はノンフィクションやルポルタージュとみなされることもあります。ですから、両者は本当に違うものなのかということを95号では考えました。とくにフィールドワークなどの「臨床知」と書物から得られる「専門知」のせめぎ合いから、両者の共通点を見出す可能性を議論しました。
この記事に関連するニュース
-
日本のコロナ対策は本当に効果があったのか?...経済学で事後検証する
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月22日 10時50分
-
「ベルばら」にも登場!「フランス革命の主役」の素顔を描く『ロベスピエール:民主主義を信じた「独裁者」』が本日発売!
PR TIMES / 2024年11月20日 10時45分
-
SlowNews、安田洋祐、岩永直子、堀潤…アカデミズム×ジャーナリズムで「ハームリダクション」を考える無料イベントを開催【11月20日】
PR TIMES / 2024年11月12日 17時15分
-
第46回 サントリー学芸賞決定
PR TIMES / 2024年11月12日 16時45分
-
第24回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」発表
共同通信PRワイヤー / 2024年11月12日 14時0分
ランキング
-
1ノルウェー皇太子妃の連れ子、釈放も新たな性犯罪容疑
AFPBB News / 2024年11月28日 12時41分
-
2トランプ氏、メキシコ大統領が「国境封鎖に同意」と主張 本人は否定
AFPBB News / 2024年11月28日 14時33分
-
3バルニエ仏内閣が崩壊危機、来年予算案巡る議会との折衝難航で
ロイター / 2024年11月28日 14時3分
-
4韓国ドラマはつらい暮らし耐え忍ぶ糧…脱北の24歳女性、正恩氏に「忠誠心のかけらもない」
読売新聞 / 2024年11月28日 7時6分
-
5トランプ氏の対カナダ関税、米ガソリン価格押し上げへ アナリスト警告
ロイター / 2024年11月28日 12時12分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください