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ハリス氏惨敗の背景に「アメリカ中流階級の生活苦の悲鳴」が聞こえる

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月8日 13時0分

楽観できる材料がないわけではない。7月には、インフレ率が2.9%まで下落した。これは21年3月以来最も低い値だ。7月には、小売業の売上高も市場の予想を大きく上回り、前月比で1%増加した。

しかし、食品や住宅、その他の必需品やサービスの価格が上昇し続けている状況が人々の心理に及ぼしている影響は極めて大きいと、エコノミストたちは指摘する。

投資会社ワーニック・スピアー・ウェルス・マネジャーズのファイナンシャルアドバイザー、ジョーダン・ロドリゲスによれば、同社の顧客である投資家たちの間では、インフレが最大の関心事であり続けている。中小企業のオーナーの場合、その傾向がとりわけ顕著だという。

「(中小企業のオーナーたちにとって)最大の不安材料は景気減退ではない。製造業やそれに類する業種では、受注はたいてい減っていない」と、ロドリゲスは言う。

「最大の不安材料は優れた人材の確保でもない。ほとんどの経営者は、インフレが最大の不安材料だと言っている」

物価上昇の影響に苦しむ10人家族のタイラー・アズアは生活費を複数のクレジットカードで支払いながら毎日を乗り切っている COURTESY OF TYLER AZURE

フロリダ州ケープコーラルに住むジョン・オルセン(53)も、そのような不安を痛感している。犬の誕生パーティー用品などを取りそろえたオンラインショップ「ポーティーエクスプレス・ドットコム」を経営するオルセンは、燃料費や食品価格の上昇などにより膨れ上がる事業経費に苦しめられている。

いまオルセンはクレジットカードの債務を抱えていて、会社が廃業に追い込まれるのではないかと恐れている。バイデンが言う「ソフトランディング」どころの話ではない。

「政府は私たちをだまそうとしているのではないか」と、オルセンは言う。「普通の人たちの感覚に比べて、信憑性の乏しいデータを基に発言しているように思う」

オルセンによれば、ビジネスオーナーとして最も手ごわく感じる問題はインフレだという。22年には、1981年以来最悪の9.1%までインフレ率が上昇したこともあった。

例えば、オーガニックチキンの仕入れ値は、ここ数年で2倍に跳ね上がった。これでは、ウォルマートや、ペット用品オンライン販売大手のチューイーといった大型チェーン店とは競争できない。

卵やガソリン、自動車保険といった基本的な生活用品やサービスの価格も、コロナ禍前と比べると大幅に上昇している。

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