1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

ハリス氏惨敗の背景に「アメリカ中流階級の生活苦の悲鳴」が聞こえる

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月8日 13時0分

ムーアと同じように、多くのアメリカ人はクレジットカードで生活費の支払いをしている。ニューヨーク連邦準備銀行によると、今年4〜6月期のアメリカの家計のクレジットカード債務残高は過去最高の1兆1400億ドルに達した。前年と比べて5.8%もの増加だ。

クレジットカードは、「あとで返済できる収入だと思っている」と、ムーアは語る。「いつも限度額ぎりぎりまで使い切っているのは、とにかく生活費が高いから。贅沢をしているわけじゃない」

年収15万ドル以上でも不安

モンタナ州ハバーに住むタイラー・アズア(31)も、夫を含む10人家族の毎月の生活費はクレジットカードで支払っている。週600ドルほどになる食料品もカード払いだ。

「とんでもない状況だ」と、アズアは言う。「(カードの返済で)私と夫の給料はほとんど手元に残らない。でも、どこを切り詰めればいいか分からない。毎晩ラーメンで済ますわけにもいかないし」

アズアは事務部門の管理職だが、1月にも9人目の子を出産予定で、好況への期待感より、将来への不安のほうが大きい。「クレジットカードは3枚持っているけれど、全部限度額まで使い切っている」と彼女は言う。「そして毎月の返済額は最小限に抑えている」

一家は1月に6LDKの家に引っ越したばかりだが、将来のことは全くわからないと、アズアは言う。「子供を産み、充実した人生を送り、子供たちが親よりも良い人生を送れるようにする経済的な余裕、そういうものが今は全然ない」と、アズアは語る。

「そうなればいいなと思うけれど、現実味は乏しい」

生活に不安を抱いているのは、低所得層や中間層だけではない。6月に発表されたフィラデルフィア連邦準備銀行の調査では、年収15万ドル以上のアメリカ人の約32.5%が、向こう6カ月の家計が赤字に陥らないか心配だと答えている。1年前は21.7%だったから大幅な上昇だ。

ただ、この調査で「将来が不安だ」と答えた人の割合が最も大きかったのは、年収4万ドル以下の層で、40%に上った。全調査対象者の平均は34.9%だった。

「最近の経済指標は景気後退の可能性が低いことを示しているが、高金利、多額の債務、物価上昇の影響は家計に大きくのしかかっている」と、米調査会社ウォレットハブのアナリストであるチップ・ルポは語る。

「年初は家計のクレジットカード債務が5000億ドルほど減ったが、だんだんと雲行きが怪しくなってきた。今後はもっとひどくなるだろう。例年、クレジットカード債務が最も増えるのは秋以降だから」

FRBは9月、4年半ぶりに利下げに踏み切ったが、やりすぎればインフレの再燃につながる恐れがあると、ルポは警告する。

「多額の債務と物価上昇の根強い不安には、慎重な金融政策で対処する必要がある。確かにほとんどの人は今のところ仕事に就いているが、相当なやりくりをしなければ、その仕事では生活していけない」

それに経済指標は良好でも、多くの家庭にとって、猛烈な物価上昇の痛手は簡単には消えないと、職場文化の専門家であるジェシカ・クリーゲルは語る。「マクロ経済指標は、普通の人たちが肌身で感じる日常を反映していない」

そんななか、今後の波乱に備えるためにも、人々は自分の内面に目を向けるべきだと、クリーゲルは言う。

「こうなったのは誰のせいだと考えるのではなく、これから自分に起こる可能性があることをコントロールするために、いま自分にできることに意識を集中して、賢い選択をしていく必要がある」

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください