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ハリス氏惨敗の背景に「アメリカ中流階級の生活苦の悲鳴」が聞こえる

ニューズウィーク日本版 / 2024年11月8日 13時0分

独身のアディソン・ムーアも、生活費を複数のクレジットカードで支払いながら毎日を乗り切っているは同じ COURTESY OF ADDISON MOORE

クレカ債務という甘い誘惑

ピュー・リサーチセンターの調査によると、6月の時点で、シリアルや牛乳など朝食の定番品の価格は、20年1月と比べて約40%も高かった。食品全般で見ても、19〜23年の4年間で25%上昇と、住宅価格や娯楽費、医療費などの上昇を上回っている。

米農務省によると、同時期に輸送コストも27.1%上昇した。ただ、ガソリンの小売価格は乱高下が激しい。6月の小売価格は20年1月と比べると35.9%高かったが、7月下旬には1ガロン当たり3.598ドルと、22年半ばのピーク時と比べれば半額近くまで下がっている。8月半ば過ぎには3.382ドルと、1年前よりもわずかに安くなっている。

これに対して6月の自動車保険料は、20年1月と比べて47.3%も上昇した。その背景には、修理費の上昇(47.5%)がある。

「今は自宅のソファに寝転がっているしかない。ここ6〜7回企画したイベントは、利益がほとんど出なかったから」と、オルセンはため息をつく。「2年半前は年40〜50%のペースで売り上げが伸びていたのに、今はゼロに近い」

首都ワシントンに住むアディソン・ムーア(24)は、2つのアルバイトを掛け持ちしながら、職業訓練学校に通っている。月収600ドルでは贅沢をする余裕はほとんどなく、目先の数カ月を乗り切れるか考えるだけで精いっぱいだ。

「正直言って、生活はかなり苦しい」とムーアは言う。「クレジットカードのおかげで生き延びているようなものだ。カードなら毎月の返済額を抑えることができるから」

現在は友人の実家に居候しているが、フードスタンプ(低所得者向け食料クーポン)の受給資格は失ってしまったため、1週間の食費を100ドル以下に抑えるのに必死だ。定期的な貯蓄はほとんどできない。

アメリカンドリームなんて夢のまた夢だ。「夢見る以前に乗り越えなければならないハードルが多すぎる」と、ムーアは浮かない顔で言う。

インフレが収束し、雇用指標も良好だから、米経済は景気後退を回避できるという見方に、ムーアは同意できない。経済指標は、多くのアメリカ人の置かれた状況を反映していないというのだ。

「数字は良好でも、私たちはとうてい明るい気分にはなれない」とムーアは言う。「指標が物語ることは、経済の末端で起きていることとは全く違う気がする」

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