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スポーツでの脳震盪が「鬱や自殺」に繋がることも...選手の脳を守る「血液検査」の可能性

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月25日 15時26分

現在は研修を受けた医療従事者が医療機関で使うことしかできない。だがアボットの広報担当者によれば、同社はこの検査機器を「必要などんな場所でも、自動車事故や衝突事故の現場やスポーツイベントでも」使える未来を思い描いているという。

この検査の仕組みについて、イスラエルのシェバ医療センターの神経学者で臨床研究責任者のラケル・ガードナーはこう説明する。

「この技術の柱となっているのは2つのタンパク質だ。いずれも脳の損傷もしくは中枢神経系の損傷を示し、血液検査で測定できる。(タンパク質の)1つは神経の損傷に関係するマーカーで、もう1つは脳細胞を支える神経膠(しんけいこう)の損傷を示している」

クリアすべき課題は山積み

ガードナーの言う2種のタンパク質とは、脱ユビキチン化酵素の1種とグリア線維性酸性タンパク質だ。

「外傷性の脳損傷を受けて脳内で出血が起きると、この2種のタンパク質の血中濃度が上昇する」と、ガードナーは言う。「この2種のバイオマーカーは1つの検査で測定でき、負傷の直後と24時間後に脳の外傷を評価できる」

今年のプレシーズンの脳震盪件数は統計開始以降で最も少なく、「本質的な変化が起きている」と語るNFLのシルズ AP/AFLO

承認済みのこの血液検査は、今のところ救急病棟などでCTスキャンの必要性を評価するために使用されているだけだが、NFLはこの検査に注目している。

「当然ながら私たちは極めて注意深く、あらゆる進展を見守っている。どうすればより的確に脳震盪を特定し診断してケアできるか、常に注視している」と、NFLの最高医学責任者(CMO)を務めるアレン・シルズは本誌に語った。

とはいえ、バイオマーカーを使った検査を脳震盪の診断に使うには、まだクリアしなければならない課題があると、シルズは言う。2種のバイオマーカーは「脳震盪の指標ではない。そこはいささか誤解されているようだが、この2つは脳内出血の有無を示す指標だ」。

シルズによれば、この検査は外傷性脳損傷の診断には役立つだろうが、「スポーツによる脳震盪の診断を大きく変えるようなものではない」という。「スポーツによる脳震盪が多少なりとも脳内出血を伴う確率は極端に低く、おそらくコンマ数%にすぎないからだ」

一方、ガードナーによると、「意識を失った選手が運ばれてきたら、必要なのはこの検査ではなく、すぐにCTスキャンをすること」だ。しかし、はっきりした症状がない場合は「検査をして基準値以下なら、99%の確率で脳内出血はないと考えられる」という。

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