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スポーツでの脳震盪が「鬱や自殺」に繋がることも...選手の脳を守る「血液検査」の可能性

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月25日 15時26分

つまり、この検査のメリットは「放射線被曝を伴い、コストも高くつき、救急病棟にとどまる時間が長くなる頭部のCTスキャンを減らせる」ことだ、というのだ。

しかし、この2種のバイオマーカーの利用については、まだ研究が行われている段階だ。まず基準値、つまり正常な範囲の血中濃度を設定するために膨大なデータを収集する必要があると、ガードナーは言う。その上で臨床的に有意な脳損傷の診断閾値を厳密に設定することになる。

また、ごくわずかな脳細胞が死んだ場合でも、この2つのバイオマーカーの値が測定可能なほど上昇するかどうかは分からないと、ミシガン大学のフレデリック・コーリー教授(救急医療)は指摘した。「これは検証を必要とする重要な問題だ」

こうした課題がクリアされたら、この技術は頭部打撃を受けたスポーツ選手を守ることにどう役立つのか。

「NFLでは、脳震盪が見逃されることはめったにない。最低でも全試合に医師の資格を持つ神経外傷顧問3人と選手のけがを監視するアスレチックトレーナー2人が派遣されているからだ」と、コーリーは言う。

だが「負傷のリスクは高いのに、監視体制が不十分な競技では、見逃されてしまう」。そうした競技では血液検査が大いに役立つだろう。

復帰時期の判断の切り札に

ウェストバージニア大学ロックフェラー神経科学研究所の脳震盪・脳損傷センターを率いるハビエル・カルデナスによると、どんな競技であれ、血液検査は脳震盪の診断ではなく、回復の評価に活用することでゲームチェンジャーになり得るという。

「脳震盪の疑いがある選手を試合から外すのは、ある程度の経験があれば、そう難しくない」と、NFLの頭部・頸部・脊髄委員会の副委員長でもあるカルデナスは言う。難しいのは復帰のタイミングを見極めること。「脳の損傷が治癒し、頭部を打つ可能性がある競技に出ても大丈夫だと、どの時点で言えるかだ」

リーグによって復帰の指針は異なるが、一般的には症状が消えて、認知機能検査に合格し、少しずつ体を動かして、通常のトレーニングを再開できたことなどが条件になる。だが、こうしたマニュアルでは一概に判断できないケースもある。

「問題は、既存の検査の大半は損傷を受けてから時間がたつほど、脳震盪を起こしたかどうかが分かりにくくなることだ。そのため脳の損傷が治癒したかどうかを確実に判定できなくなる」と、カルデナスは言う。

「私たちは最善を尽くすが、脳が十分に回復し、プレーに復帰しても大丈夫だと保証することは難しい。バイオマーカーが大きな可能性を秘めているのは、そこだと思う」

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