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スポーツでの脳震盪が「鬱や自殺」に繋がることも...選手の脳を守る「血液検査」の可能性

ニューズウィーク日本版 / 2024年12月25日 15時26分

だが、誰もが同じ意見ではない。ドルフィンズのQBタゴバイロアは10月下旬の記者会見で、ガーディアンキャップを着用するかと問われてこう答えた。「もちろんノーだ。私はリスクを覚悟している」

NFLによれば、今年のプレシーズンの脳震盪件数は、統計を取り始めた15年以降で最も少なかった。ガーディアンキャップの導入に加えて、ヘルメットが改良され、頭部の接触に対する考え方が変化したおかげだと、CMOのシルズは指摘する。

QBジョシュ・アレンの「脳震盪疑惑」が起きたビルズ対テキサンズ戦 AP/AFLO

NFLの脳震盪件数は昨年、全般的に減少し、そのうち44%は何らかの形での自己申告に基づいていた。

「私は30年近くスポーツドクターをしている」と、シルズは言う。「10~15年前なら、自己申告がこんなに多いことはあり得なかったと断言できる。当時は大した負傷ではないと主張したり、けがをした可能性を認めずにプレーを続けようとしがちだった。本質的な変化が起きている」

NFLの取り組みに対して、皮肉な見方をしたくなる事例はある。例えば、バッファロー・ビルズのQBジョシュ・アレン(Josh Allen)は、10月6日の対ヒューストン・テキサンズ戦で頭部に衝撃を受けたが、すぐにプレー復帰を認められた。この件については、さらに調査が必要だとの指摘がある。

十分な情報に基づく判断を

それでもNFLの統計に間違いはないと、シルズは確信している。

「NFLは公表を前提にデータを提出している。査読付き論文への掲載を望んでいるからだ」と、シルズは言う。

「データは現在、審査中だ。同時に、自分たちでも分析を行い、改善方法を探り続ける。健康と安全の追求にゴールはない、というのが私たちのモットーだ。データを慎重にチェックし、改善された点を確認しながら、さらなる前進を実現する機会を追い求めていく」

アスリートの脳震盪をめぐる認識や受け止め方が変化したのは、パトリック・リシャCTE啓発財団の努力の成果でもある。

「情報提供が、より安全なスポーツへの第一歩になると考えている」と、リシャの義父ダグ・ジーゲルは語る。「プレーに伴う外傷の深刻度に応じて、競技をランク付けすることを検討してもいいかもしれない。映画のレーティングシステムは存在するのに、スポーツにはそれがない」

「理想を言えば、衝撃が繰り返されるスポーツは禁止すべきだ。ぶつけ合うのが肩でも頭でも、脳がダメージを受けるのだから。だが少なくとも保護者や関係者が危険を理解していれば、十分な情報に基づく選択ができる。適切な情報を提供することで、賢明な決断を促せるはずだ」

ユースリーグでもプロレベルでも、選手の脳の状態を確かめることができれば、流れは大きく変わる。バイオマーカー検査が進化すれば、選手のプレー復帰の是非について、よりよい判断が可能になる。

「頭部の接触が大きな話題になっているのは喜ぶべきことだ。衝突の可能性を最小限にしたい」と、シルズは言う。

「私は神経外科医として、脳損傷や脊椎外傷の患者の治療に力を注いできた。スポーツがより安全になるなら、何であれ大きな前進だ。大学スポーツの選手だった子の親で、スポーツをする9人の孫がいる私にとって、スポーツの安全性は仕事であるだけでなく家族の問題であり、コミュニティーの問題でもある」

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